眠りからさめたあらたなるPrintworks【Ken KobayashiのロンドンところどころVol.9】

Posted :28/10/2018 , Modified :

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ロンドン在住のシンガー・ソングライターKen Kobayashiによるコラム。さまざまな人種や言語が交錯する世界的文化都市であり、また自身の生まれ育った場所でもあるロンドンの街中で出会った、音楽やカルチャーにまつわるあれこれを綴ります。今回はロンドンを代表するあらたな名所「Printworks」のおはなし。

いまロンドンで最も"アツい"と言われているクラブが南ロンドンにあるのを知っていますか?その名は「Printworks」。ロンドンにはめずらしい、6000人収容可能な大規模なクラブで、名前のとおり、むかし印刷工場だった建物を改装して作られたものだ。昨年1月のオープン以来、音楽ファンのみならずロンドンの街中でも話題にあがるホットな場所となっているのでぼくもずっと気になっていたのだけど、今月ついに行くことができた。期待に胸を高まらせながら会場に入ると、噂どおりのすごい場所だったので、その様子を写真とともに紹介したいと思う。

写真で見るPrintworks

Londres vu par ken kobayashi 09 print works

まず驚いたのは、その会場の広さ。息を飲むほど広大な空間はいくつかのスペースに区切られており、そのうちのひとつであるメインフロア(写真)は高さ17m、幅30m、奥行き120m(!)もあるという。同じくロンドンを代表するクラブFabricとくらべても圧巻のサイズ感だ。

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メインフロアに併設されているロッカーエリアやドリンクスペース(上記写真)も含めて、このスペースが生み出す開放感には誰もが圧倒されるはずだ。さらにコンクリート打ちっぱなしの壁や床、剥き出しになった80年代の機械や配管パイプが独特な雰囲気を作り出している。ぼくが訪れた日はMaceo Plexというテクノ系のDJがヘッドライナーのイベントが行われていたが、フロアのインダストリアルな情景が音楽にぴったりだった。鉄骨の梁に当たりながらあらゆる方向に伸びるカラフルなビーム、何千人もの人が踊るエネルギーと、心地良い音を提供してくれるサウンドシステムとが作りだす空間に身を投じることは特別な体験で、「このクラブに来てよかった!」と心から思えた。

Broadwick Liveが生み出した印刷工場のニュー・チャプター

この建物が印刷工場として役目を終えたのは2013年。昔はEvening Standardなど、イギリスではお馴染みの新聞が印刷されていた。閉鎖時に建物の取り壊しも考えられたそうだが、機械の騒音を和らげるために、すでに防音されていることや、暖房を完備していることに注目したBroadwick Live(Field DayやHideoutなどの大型野外フェスを運営をする音楽プロモーター)が購入。独自の雰囲気を醸す大人気ヴェニューとして見事な復活を遂げた。

ちなみにPrintworksのイベントは昼間にスタートして、深夜0時ごろには終わっていることが多い。ぼくが行った日のイベントも昼間の14時スタートで、終了したのは23時だった。そのほか、イギリスにはめずらしくロッカーが完備している点もうれしいし、入場時の荷物検査が厳重だったことも印象に残っている。室内にはダンスフロアの他、アートの展示スペースがあったり、中庭では美味しいフードメニューが楽しめたり、クラブというよりまるでミニ·フェスティバルに来たかの様な雰囲気だった。

Londres vu par ken kobayashi 09 print works05イベント中の中庭の雰囲気。フードブースがあるクラブもとてもめずらしい

最近とある記事で今のイギリスの若いクラブミュージック・ファン達は清潔で、安全で、音楽だけでなく総合的に楽しめるような場所を求めていると書かれているのを目にしたことがある。昔のイギリスのクラブ文化(その中でも特に、汚いトイレやドラッグ使用などのある意味"負"の部分)と比較してということだろう。チケットは少し高めだけど、運営がしっかりしていて、しかも昼間から安全に楽しめるPrintworksという新しい会場。この場所とここに集まる多くの若者達は、記事で書かれていたことを象徴しているとも言えるかも知れない。

ドックランズに起きたひとつの奇跡?

話しはそれるが、Printworksを含む周辺の地域はかつてロンドン随一の大きな港だった。その名残で、この地域は「ドックランズ(Docklands, Dock = 船渠)」と呼ばれている。1960-70年代以降に港は廃れてしまったが、その後は再開発がすすみここ数年は高級マンションやオフィスの建設が相次いでいる。もしかするとPrintworksの建物も、Broadwick Liveに発見されてなければ、再開発の波に飲まれて、いまとはまったく違う姿となっていたかもしれない。以前このコラムでも触れたように、ここ数年はロンドンにおけるクラブやライブ会場の閉鎖が多い時代だっただけに、古い建物が巨大な音楽ヴェニューに生まれ変わったことは、実に喜ばしいニュースだし、ある意味奇跡と呼べるかも?

Londres vu par ken kobayashi 09 print works06©︎ Nao Okuno

もしあなたがPrintworksを訪れる機会があれば、かつては印刷工場だったことや、さらに昔は船が行き交う港だったことをぜひ思い出してほしい。それから、とあるプロモーターの目に止まらなければ、建物自体が無くなっていたかもしれない事実にも。そうすればインダストリアルな雰囲気のクラブで鳴り響くビートが、さらに重みを増して聞こえてくるかもしれない。

著者プロフィール

Ken profile photo

Ken Kobayashi

ロンドン在住の宅録シンガー・ソングライター。日本、ドイツ、イギリスにルーツを持つ自身のバックグラウンドとほとばしる好奇心を生かし、ラテン、ボサノヴァ、エレクトロ、ブリット・ポップなど多種多様なジャンルを咀嚼した良質なポップ・サウンドを奏でる。これまでに自主レーベルSound Dust Recordsより2枚のアルバム「 My Big Foot Over The Sky 」「 Maps & Gaps 」を、P-Vineより「 Like The Stars 」をリリースしている。最新作はシンガーKanadeとコラボしたシングル「 ハグ 」と「 アカイソラ 」。夢は世界一周。Facebook / Twitter / soundcloud / instagram

                     

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