Years & Years「Palo Santo」と次世代ポップアイコンとしてのOlly Alexander【Ken Kobayashiのロンドンところどころ vol.7】

Posted :05/08/2018 , Modified :

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ロンドン在住のシンガー・ソングライターKen Kobayashiによるコラム。さまざまな人種や言語が交錯する世界的文化都市であり、また自身の生まれ育った場所でもあるロンドンの街中で出会った、音楽やカルチャーにまつわるあれこれを綴ります。今回はロンドン出身の3人組シンセ・ポップバンドYears & Yearsと、そのボーカルのOlly Alexanderのおはなし。

Years & Yearsのシネマティックな新作「Palo Santo」

みなさん、この暑い夏いかがお過ごしでしょうか?ぼくは、先日のフジロックにも出た話題のバンド、Years & Yearsのニューアルバム「Palo Santo」を毎日のように聴いています。今回はぜひこのアルバムを紹介したい。

Londres vu©︎ROY RHIMES
Years & Years「Palo Santo」のジャケットはこんな感じ。LPでも出ているところが最近のバンドっぽいですね。

このアルバムがすごいのは、なんといってもその壮大な世界観だ。アンドロイドに支配され、人間が希少価値をもつ商品となったディストピアな近未来社会「Palo Santo」を舞台に、恋愛、セクシュアリティ、宗教や信仰など、時代を超えたディープなテーマが歌われている。下のMVやアルバム収録曲をベースにした短編映画を見れば、その世界観は一目瞭然だろう。

アルバム1曲目「Sanctify」のMVは、アンドロイドの世界で久々に発見された人間に、エンタテイナーとしての素質があるかどうかオーディションで試される、というストーリー。バンドのフロントマンOlly Allexanderがオーディションを受ける人間の役を演じる。このMVは「Palo Santo」3部作の第一弾と位置付けられている

アルバムの映像やビジュアル作りに関しては、バンドのフロントマンでもあるOllyくんがスケッチやコラージュを用意して、監督のFred Rowsonにみずから依頼したことからはじまったそう。そこからふたりで丸一年かけて「Palo Santo」のイメージを練りあげて言ったらしい。しかもアルバムの世界観がひととおり見えたところで、準備していたアルバム用のデモ音源をすべてボツにして、一から全曲作りなおしたというから驚きだ。Ollyくんが全体的なイメージをかたち作ることにいかに情熱を注いでいたかがよくわかるエピソードだと思う。映像、ビジュアル、音楽が一体となったトータルプロデュースとも言えるアプローチに、ぼくも同じミュージシャンとして大いにインスピレーションを受けた。

そんな製作プロセスの影響もあってか、トロピカル・ハウス系のある意味”軽い音”だった前作「Communion」に比べて、サウンドの面でも重厚さが加わった印象を受ける。「Palo Santo」はこんな風にいろんな面で、Ollyくんのプロデュース力の高さ、そしてバンドの進化が確実に感じられる作品となっている。

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あたらしい時代におけるポップ・アイコンOlly Alexander

赤に染めたヘアスタイルが印象的なボーカルのOllyくん。他の2人の存在も無視はできないけれど、彼がYears & Yearsの主役であることは間違いないだろう。力強さにくわえて繊細さも感じられる美しい歌に、ぼくはあのマイケルジャクソンやThe Weekendの姿を思い起こさずにはいられない。影響を受けたアーティストはRadioheadやSigur Rósのほか、Justine TimberlakeやBritney Spears、UKボーイズバンドのBustedだという。意外にポップで微笑ましいし、完全にぼくと時代が被ってる!実はミュージシャンとして有名になる前には俳優としても活躍していて、例えばBelle and Sebastianのボーカル(ステュアート・マードック)が初めて監督をした映画「God Help The Girl」なんかにも出演している。俳優としての経験も、彼のプロデュース力の高さの秘訣かもしれない。

Years & Yearsのヒットによりいまや国民的スーパースターとなったOllyくんは、いまイギリス国内でLGBT+ムーヴメントのアイコンとして注目を浴びる存在でもある。昨年BBCで放送された「Growing Up Gay」というドキュメンタリーでも彼がフィーチャーされているほか、Years & Yearsとして出演したグラストンベリー2017では、彼のアイコンぶりを象徴するような一幕を見せてくれた。

「ぼくの生きかたは、ときには怖い思いをすることもあるけれど、そんな自分の人生を恥じたことはこれまで一度もない。なぜなら、ぼくは自分が自分らしくあることを誇らしく思っているから。さあ、いま『恐怖』という感情をレインボーで取り払おう!」と訴え、さらに観客が歓声でそれを迎える様子には本当に感動する。LGBT+に対して少しずつオープンになりつつあるこの時代、彼のようなポップスターがいることに勇気をもらう若者が世界中にいるだろう。そう考えるとなおさら、Years & Yearsというバンドを応援したくなる。

O2アリーナのステージに立つ(予定の)Years & Years

デビュー当時から人気を誇っていたYears & Yearsだけど、つい最近までUnion ChapelやKokoなど1000人規模のヴェニューでライヴをしていた印象だ。一方で、今年の秋〜冬の「Palo Santo」アルバムツアー・ファイナルの会場は、ロンドンの2万人収容の多目的施設、O2アリーナで行う予定となっている。日本で言えば武道館のように大物ミュージシャンがライブをする場所だ。これはもの凄いスピードでトップに辿り着いてしまったYears & Yearsの勢いを物語っている。

IMG 0688 1©︎ ROY RHIMES
テムズ川沿いにあるO2アリーナ。建物の改装を経て2007年にリニューアルオープンした。オープニング・イベントでボン・ジョヴィのライブが行われたり、レッド・ツェッペリン再結成の最初の公演の場所としても選ばれたりしている

ビジュアルでも、サウンドでも、知名度においてもさらに一段上のステージへ進んだ感のあるロンドン発のこの三人組は、次にどんな世界をみせてくれるのだろう。そう考えるといまから楽しみだ。数年後、今度はヘッドライナーとして再びフジロックにやってくるかも!?

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著者プロフィール

Ken profile photo

Ken Kobayashi

ロンドン在住の宅録シンガー・ソングライター。日本、ドイツ、イギリスにルーツを持つ自身のバックグラウンドとほとばしる好奇心を生かし、ラテン、ボサノヴァ、エレクトロ、ブリット・ポップなど多種多様なジャンルを咀嚼した良質なポップ・サウンドを奏でる。これまでに自主レーベルSound Dust Recordsより2枚のアルバム「 My Big Foot Over The Sky 」「 Maps & Gaps 」を、P-Vineより「 Like The Stars 」をリリースしている。最新作はシンガーKanadeとコラボしたシングル「 ハグ 」と「 アカイソラ 」。夢は世界一周。Facebook / Twitter / soundcloud / instagram

                     

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