「エレニの帰郷」(テオ・アンゲロプロス)レビュー

Post Date:07/05/2016 Modified Date:

  

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テオ・アンゲロプロス監督「エレニの帰郷」を観ました。原題は「The dust of time」。時の塵。

1950年~2000年に起こった歴史に残る事件を描きつつ、それらに翻弄されながら色々な国や場所へ旅をする女性・エレニとその家族、さらに彼女と深い関わりを持つ二人の男性の姿を描いた作品。とても複雑。主人公的存在であるエレニの息子にはアンゲロプロスの多くの過去作同様に名前がない。この話自体が彼目線の物語と考えると、この映画はつまり無名の人によって語られる一種のおとぎ話なのかな、とか思った。俳優陣の表情も作中ほとんどニュートラル、というか映されないことも、その考えに拍車をかける。

あと気になったのは、まるでフェリーニのように、ていうかフェリーニよりさらに強力に登場人物(モブ)がこちらをじっと見つめてくること。映画館の観客、スターリン逝去に伴い彼の像の前で黙祷を捧げるソ連国民、廃墟ビルに巣食うルンペンの集団、みんな時間の感覚を失うほどこちらをじっと見てくる。あと見てくる場面に関連して、エレニの孫のエレニ(同姓同名)の部屋に大量に張り巡らされたボブ・マーリーやチェ・ゲバラなどいわゆるロックスターたちのポスターが貼られていて、中にデイヴィッド・リンチ「イレイザー・ヘッド」の主人公の写真もあった。
それを「気狂いピエロ」みたいなメタ演出だ、とかそんな無粋なことをいう気は全くなくて、要はこの作品もまた、多くの映画監督が扱ってるような「映画についての映画」だということなのかな、なんて思っている。何よりも映画の成立とほぼ同時期に始まった20世紀を主題にしていることがその思いを強くしますね。

印象に残ったシーンはたくさんあるけれど、やっぱり一番に挙げたいのはスターリン像が大量に集められた部屋のシーン。ダリの描いた「 部分的幻 影、ピアノに現れたレーニンの6つの肖像 」を思い出しました。あとパイプオルガンのシーンも好き。スターリンの像もそうですが、作中では破壊されたテレビとか、ガラスの破片とか石造りのふきのとうとか、そういうオブジェクティブなモチーフがたくさん出てきてそれもすごくエキサイティングだった。あとはやはり、イメージでも言葉でもたびたび言及される「第三の翼」、という考え方でしょうか。

びっくりしたのはワンカット15分くらいが当たり前の監督、とは聞いてた、まさかそのワンカットで過去と現在をいったり来たりさせるとは思わなかった。ギョーム・アポリネールの「プラハの街角で出会った男」という小説のことも思い出したが、何か関係しているのだろうか。

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