グザヴィエ・ドラン「トム・アット・ザ・ファーム」レビュー。暴力で人を支配するのは良くないよね。

投稿日:10/06/2016 更新日:

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グザヴィエ・ドランの「トム・アット・ザ・ファーム」をみました。

カンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞し、ドランの名を一躍世界的なものにした作品「わたしはロランス」を途中であきらめてしまったので、今回ももしかしたらそうなってしまうかもしれない、とヒヤヒヤしながら最後まで観ようと決意して臨み、結果ちゃんと最後まで観れたし観てよかったとさえ思えました。

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あらすじ

この映画の主人公は広告代理店に勤めるホモセクシュアルの青年トム。グザヴィエ・ドラン自身が演じている。彼が、亡くなった恋人ギヨームの葬式に出席するため、ギヨームの生家である農場を訪ね、ギヨームの母親アガットや兄のフランシスと出会う。アガットは息子をホモセクシュアルだと知らず、息子の恋人が葬式に参列しないどころか連絡もしてこないことに憎しみの感情を隠さない。とはいえ本来の恋人であるトム(アガットには先んじて女性の恋人の存在を語られてしまったので、ギヨームの親友として接している)には非常に親密な対応をしている。一方のフランシスは(自身の超保守的、というよりマッチョな思想に基づいての行動ではあるが)母親を悲しませたくない一身で、息子の恋人の存在や、彼女の名前がサラであったり、喫煙者であったり、パスタが好きだったりなどのでっち上げた情報を吹き込み、存在しない恋人をアガットのなかに作り込んだ張本人。そして実際はトムが恋人であることを知っているがゆえに彼の存在を疎ましく思い、母親を悲しませないためというより保身のため、脅迫まがいにトムに「自分がギヨームの恋人であったことを決してアガットに言ってはならない」と命令しつつ、しかしアガットにまるで息子のように気に入られているトムを農場に引き止めともに生活させることにする。トムは自分の車を破壊されるなどなかば軟禁状態で農場にとどまることになるが、次第にフランシスの想いに同化していく−−

「トム・アット・ザ・ファーム」は、簡単にいえばそんなお話でした。

恋愛関係や友情関係をホモセクシュアルな方面に拡張して表現

主人公が性的に倒錯していてニヒルだとすぐそう思ってしまうのだけど、すごく村上春樹っぽい話だった。特にノルウェイの森。その小説の中で表現した、1980年代には恋愛でしかありえなかった異性との関係や友情関係でしかありえなかった同性との関係を、ドランはこの作品のなかでホモセクシュアルな方面にも拡張した、とも言えるのかもしれません。

やたらと強権的というか、暴力で人を支配しようとする家父長的威厳の権化のようなフランシスの姿には、おとぎ話の「青ひげ」のことを思い出したし、トムがUSAのジャケットを着たフランシスを出し抜いてすぐその後に流れる音楽が「I'm tired of America」をという歌詞をリフレインするのも、つまりはそういうことなのかな、と思う(実際にはドラン的ユーモアなのかメッセージなのか量りかねるけれども)。あと同じホモセクシュアル映画としては強権というか科学技術によって精神ではなく肉体的に人間を変えてしまうペドロ・アルモドバルの「La piel que habito」を、フランシスと彼の与える暴力に対して段々と、多分に性愛的な意味を含みつつ惹かれていくトムの姿には谷崎潤一郎を思い出しました。

ともあれ、グザヴィエ・ドランはどの辺が評価されているのだろう、と思いながら観てたのだが、たぶん編集というか映画文法的な部分で"ちゃんと"あたらしい(既存の手法を使いつつオリジナルなものにしている)ところなのかなあとか思ったり。4人がテーブルを囲んで目配せをするのとか。遠景と全員の顔のクロースアップと視線だけで位置関係を表す感じ。臨場感プラス全員の狂気が際立つ演出。映像のプロフェッショナルではないので想像することしかできないけれど。

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