ユーリ・ノルシュテインのいくつかの短編アニメーションと彼のドキュメンタリーを観ました。
今回見たのは、彼の初監督作品である「 25日・最初の日 」をはじめ「 霧の中のはりねずみ 」、「 あおさぎと鶴 」、「 きつねとうさぎ 」などの、1980年までに作られた、10分前後ながらたまらなくキュートかつ人類的ノスタルジーをくすぐる作品たち。そのどれもが素敵だったが、特にアート・アニメーション史上最高の作品との呼び声高い「 話の話 」は、画面が切り替わるごとに思わず片手を挙げて手首から上だけを軽く揺らしたくなるほどに映像的パンチラインが続出する、噂に違わぬ素晴らしい作品であった。作品中に狂言回し的に現れるオオカミがとてもかわいい。
ドキュメンタリーについて
ドキュメンタリーは、WOWOWにて放送されていたもので、約40年間制作が止まっているゴーゴリの小説を原作としたアニメーション「 外套 」にまつわる話を彼のアニメーション監督としての半生を絡めつつ描く、といった内容。「 ソビエト時代は検閲があったからこそ作品の芸術性が保たれていた 」とか「 ビジネスでしかモノを作らなくなっていることがすべての問題の根源である 」とかの刺激的な発言や、申請すればいまにも国から支援を受けられるのに「 資本主義的な現ロシア政府から援助してもらう気はない 」と頑なに拒んだり、そのおかげで必要経費を賄うために週に一度、撮影スタジオで彼の著作やイラスト入りマグカップ、冷蔵庫に貼り付けるようなマグネットなどのお土産を自ら手売りして生計を立てていたり、そんな生活をしてるがゆえ制作の時間がとれず「 外套 」の進捗は滞るばかりだったり、キューバのカストロ議長死去のニュースをラジオで聴きながらうなだれたりする姿にドキドキが止まらなかった。ある一つの思想に固執し身を滅ぼしてしまう人の典型だが、他人にそれを叱責したり非難したり、"正しい"方向に導こうとしたりする気を起こさせない雰囲気があるのが印象的である。そんな状況が辛そうではあるが決して嫌そうではない彼の姿をみると想い溢れてしまう。
ノルシュテインはアニメーターとして、チェブラーシカの映画に出てくる「 空色の列車 」の場面も担当していたらしい。「 霧の中のはりねずみ 」のキャラクターであるはりねずみ、くま、ふくろうの関係がチェブ、ゲーナ、シャパクリャクっぽいなと思ったのはそれが理由かもしれません。YouTubeで何度も繰り返し見るくらい好きなシーンだったので、そりゃ彼の監督作が琴線に触れてくるのは当たり前だよなー、と妙に納得。
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