アキ・カウリスマキ「希望のかなた」レビュー

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先日渋谷・ユーロライブで開催された国連UNHCR難民映画祭でのアキ・カウリスマキ「 希望のかなた 」日本プレミア上映を観てきました。

映画『希望のかなた』公式サイト

「 ル・アーヴルの靴みがき 」に続くアキ・カウリスマキによる「 難民三部作 」の第二作、と位置付けられているものの、先日監督自身が引退をほのめかす発言をしているため、場合によってはカウリスマキの最終作になってしまうかもしれない。そうならないことを切に願いたいものです。

ストーリーは、簡単にいうとシリアを追われフィンランドに行き着いた難民の話。テーマがテーマだけに放っておくとどうしてもシリアスになってしまいそうだが、そこはカウリスマキ、抑制の利いた脚本と撮影監督ティモ・サルミネンによる静謐な映像によって、難民指定における問題点( まるで犯罪者のように扱われてしまうことなど )やそれにまつわる内政的事情、そしてそれらを越えて存在する人道的というよりは人間的な関わりを持つことの意味を、決して押しつけがましくなく伝えていたと思う。それでいてシンプルに笑えるし泣けるんだから、只々脱帽するしかなかった。すべてにおいて過不足ない( と思わせる )完璧な映画。"カウリスマキの杉村春子"ことカティ・オウティネンもさらっと出てくるし、「 レニングラード・カウボーイズ 」マナーなロック・ミュージックもたくさん演奏されるので、監督のファンにも十分にうれしい内容になっていると思う。

「 希望のかなた 」劇中写真©SPUTNIK OY, 2017

劇中で何より感動したのは、カウリスマキ映画に必ずつきまとう小津感やストーリーの表面的な部分( おもにコミカルな場面を担う箇所 )だけに留まらない日本的なモチーフが作品内の端々に読み取れたことだろう。例えば本屋に日本文化の本を買いに行くと、ウィンドウに並ぶ本のひとつに紀伊国屋のブックカヴァーがかかっている、など。ルンペンや庶民が大活躍するところなんかは伊丹十三「 たんぽぽ 」やクロサワ映画、あるいは引きに引くと葛飾北斎的な影響を受けているのかもしれない。

はたしてなぜそれに感動したかというと、日本( 政府 )はいまのところ難民問題に関して諸々の理由でいくら金と声を出そうが結局いつまでも蚊帳の外にいるようなスタンスが拭えない存在だが、このような名作で日本的モチーフがある程度重要なポジションを得ていることで、彼ら難民に心的に寄り添うかたちで関わり合いを持てたような気分になったからだ。これは少々飛躍した考え方かもしれないけれど。

そんなわけで、難民に関心がある人もない人もみんなこの映画を観に行けばいいと思う。12/2からユーロスペースで上映されるとのことです。

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映画『希望のかなた』公式サイト

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