ヤン・シュヴァンクマイエルが「自然」とのかかわりに苦悩する【Švankmajer's list】

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自身最後の映画と銘打った作品「 蟲 」が現地でついにプレミア上映された、チェコの現役シュルレアリストである芸術家、ヤン・シュヴァンクマイエルが、彼のオフィシャルYoutubeチャンネルにて「 Jan svankmajer's list 」の新作「 Nature( 自然について ) 」がアップされていました。

この動画では、ヤン・シュヴァンクマイエルが「 自然 」について抱く退っ引きならない感情を吐露しています。テーマがテーマなだけに、シュルレアリスムの根幹に関わる思想へと展開していく、非常にエキサイティングな内容かと思います。また、彼の口からレヴィ-ストロースやフロイトやアンドレ・ブルトンの名前が聴ける貴重な音源かもしれません。以下に英文字幕書き起こし&翻訳を紹介します。

動画シリーズ「 Švankmajer's list 」に関しては、以下の過去エントリを参照ください。

関連リンク:ヤン・シュヴァンクマイエルによるインタビュー&作品解説動画まとめ

日本語訳

自然のこと

自然については少し複雑な想いがあります。

わたしは以前に「 主役を降りるために 」というテキストを書きました。そこでわたしは「 われわれは人間中心主義を放棄し、進歩の螺旋に従って幾多の可能性のひとつ、あるいは数多ある種のなかのひとつとしてあらたな歩みを始められるべき場所、単なる自然の一部となれる場所に立ち返るべきだ 」と主張しました。人間中心主義を通して自然を軽んじるのではなくね。これは我々の基礎となるものを父なる神から母なる自然に取り戻すことを意味します。つまるところ、子供にとって母親とは身ごもった瞬間から常に確実な存在ですが、戸籍に書かれていることと同じで、父親はそうとは言い切れないのです。

だからわたしはこれまで、人々が文明化を諦めること、文明化はおそらく価値がなく、文明化へと進む道は人間にとって最善の策ではなかっただろうことを主張するために全力を尽くしてきました。いまもわたしはこの考えを支持しています。さまざまな作家たち、例えばレヴィ-ストロースやフロイト、アンドレ・ブルトンをはじめとした人間の優位性に疑問を持ち、文明化を咎める著述家たちの言葉を借りながらね。

しかし、わたしが映画「 ルナシー 」を制作していたころ、資料としてマルキ・ド・サドを読んでいたとき、図らずして彼の非常に幻想的で怒りに満ちた自然への攻撃に行き当たりました。サド曰く「 自然とは我々を根本的に破壊し殺戮する売女 」であると。このようにして彼は"母親殺し"になりたがったのです。

そして現在は、今言ったようなふたつの概念がわたしのなかで戦っています。当然私の年になれば、殺人鬼がすぐドアの後ろに迫ってきているも同然ですがね…自然( =死 )という名の殺人鬼が…

( 何か言いたそうにして口ごもり、言おうとしたことをやめて )

つまり冒頭で言ったように、現時点で自然に対する態度というのは曖昧なものなのです。

英文字幕書き起こし

Nature

It's a little complicated with nature.

I have written a text "Giving up the leading role", where I claim that people should renounce anthropocentirism and return, along the spiral of evolution, somewhere where we started as one of the possibilities or one of the speices, simply a part of nature. Instead of lookin down on nature as it happens through antropocentrism. This means returning from a father-god to a mother-nature. After all, the mother is always certain when a child is conceived but the father may not be the same as what it says in the register.

So I was all for it…that people should give up civilization that civilization perhaps was not worth it - the step towards civilization may not have been the best step humans have taken. And I support this…I have quotes from various authors - from Lévi-Strauss, from Freud, from André breton and others who question human superiority and decry civilization.

But then I was making "Lunacy" and for that I was looking for marquis de Sade and I came across this fantastic, furious attack on nature, where he calls nature a whore that destroys and murders us essentially, and that he only wants to be a murderer to a mother like this.

And now, these two perspectives are fighting within me. Naturally, my age comes into this one is waiting that the murderer is just behind the door …the nature…

And as I said, the attitude towards nature is ambivalent at the moment.

関連リンク

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