ホセ・ルイス・ゲリンによる「ある朝の思い出」解説

Post Date:30/05/2014 Modified Date:

  

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5月初旬にイメージフォーラム・フェスティバル2014にて招待作品として上映されたホセ・ルイス・ゲリンの映画「ある朝の記憶(Recuerdos de una mañana)」を鑑賞してきました。

イメージフォーラム・フェスティバル2014に関しては下記エントリーを参考にしてください。

ホセ・ルイス・ゲリンの未公開作が観られるイメージフォーラム・フェスティバル2014が待ちきれない - simonsaxon.com

作品データ

この映画は、2011年に韓国で開催された第12回チョンジュ国際映画祭において、主催者側から依頼されて作られた作品です。3人の監督それぞれが短篇映画を作り、一つの長編のような作品に仕上げるという趣旨の以来で、他の2作品ではクレール・ドゥニとジャン=マリー・ストローブがそれぞれ監督を務めています。

映画の内容はというと、あるときホセ・ルイス・ゲリン監督の住む部屋の通りを挟んで向かいのアパートメントで、とある男性ヴァイオリン奏者の投身自殺が起こり、そのことに大きな衝撃を受けたゲリンが、自身の住むアパートのほかの住民や、自殺した男性の隣人、あるいは階下にある通り沿いのバルや個人経営のお店などで働く人々に起こった悲劇についてインタビューしていくドキュメンタリーになっています。そして作品タイトルは、マルセル・プルーストの文芸作品「サント=ブーヴに反論する:ある朝の思い出(Contre Sainte-Beuve : Souvenir d'une Matinée)」から採られているとのこと。現時点でゲリン監督の最新作、ということになっています。

その他さらに詳しい情報がほしい方はこちらのホームページにたくさん載っているのでチェックしてみてください。

ホセ・ルイス・ゲリンによる解説

ところで「ある朝の思い出」が上映された際、幸運なことにゲリン監督本人によるティーチインが行われ、この作品についても解説してくれましたので、以下にその要旨を記します。

この映画の制作依頼があった当時、ちょうど世界のあらゆる映画祭をまわった際に録りためていた映像を編集して作った「ゲスト」を作り終えたばかりでした。ですので「ゲスト」とは全く異なったものを作りたいと考えていました。「ゲスト」はどちらかというと部屋の中で、私の編集によるところが大きい映画だったので、今回は部屋から飛び出し、私の住んでいるストリートのポートレイトを撮ろうじゃないかと考えました。

今回のようなドキュメンタリー的な作品を監督する際は、リアル(実話)が最初にあって、それに基づいて作品を構成していく、という風にしていきます。
この作品に置けるリアル、というのは投身自殺をしたバイオリン奏者の存在です。そして例えば窓に映ったサックス奏者が事件の起こった通りを見下ろしている、というシーンというのは構成の一つ。ほかにもこの作品に出てくるアパートの住人というのは全て窓辺に立って事件について語ってもらうようにもしました。というのも、自殺した男性にもインタビューしたアパートの住人たちにも窓辺に立っているという共通項をもたらすことで、ドラマの起こった空間に隣人を通してひとつのつながりというものが織り上げられていくようにしたかったからなのです。

ほかに映画監督的視点においてこの作品を構成していくにあたって利用したのは、舞台となる建物の構造や構築性です。
事件の起こった私の住むアパートは、どの部屋も必ず通り側に面している作りになっています。その構造に合わせて、起きた事件にまつわる事実を外側の情報として描きつつ、アパートの住民たちへのインタビューを内側の、インテリオールな情報として
扱い、それぞれを交互に見せることにしました。

私はかつてドキュメンタリー形式の「工事中」という作品をつくりましたが、あれは普通のドキュメンタリーではなかった。というのも、舞台は私の住んでいる地域ではあるけれど私の住んでいるアパートではないのもあるし、何よりカメラを通して見えない傍観者としての視点を与えようとしているところがありました。登場する人々も、カメラを観るというよりはそれぞれで会話をしている。それは普通のドキュメンタリーのエクリチュールとは違う所でした。
しかし今回は自分の住んでいるアパートで起きたことを題材にしたので、カメラに客観的な視点というものを与えることは不可能でしたし、事件が起きてから日常生活を送っていても、その悲劇のイメージが頭から離れなかった。私はこの映画を撮ることで、私の周囲で起きた悲劇と向き合って、和解をする(事態をポジティブに捉える)必要があったのです。 そして、その悲劇によって私が抱えた傷を私が持っている映画というエクリチュールを通し、もう一度自分がみてきたものを交えて昇華させることで、この映画は完成しました。
また、この映画をとって以来、これまで何となく関わることの少なかった隣人たちとのコミュニケーションが生まれ、事件についての傷を共有するできたことは不思議な出来事でした。

というわけで、以上が今作のゲリン自身による解説です。上映後にも関わらず内容に直接触れることはなく、メタな部分、制作意図のみを語ってくれました。

最後に。

最後に僕自身の感想を少し。この映画には、木漏れ日、窓ガラスに映る人影などのゲリン節ともいえるイメージの中に、失われたもの、例えば自殺した男性だったり、隣人とのコミュニケーションだったり、そういったものに対するノスタルジーが散りばめられていたように感じました。

印象に残ったシーンは、転落自殺の起こったマンションがある通りの美容室で事件について語る三人の女性、アパートの隣人のひとりであるチェリストの娘、そして何と言ってもバルに通いつめる古道具屋の店主。その人物は脳卒中で一命をとりとめたあとドミノ名人になった男性で、あだ名はロバート・ミッチャム、という詩的でしかない存在でした。あと、映像的にはレコードプレーヤーのあるがらんとした部屋(故人の住んでいた部屋、と考えることもできる)での次々にカットが入れ替わるモンタージュが一番ゾクゾクしました。

それでは今回はこのへんで。同時に上映された「アナへの2通の手紙」に関する解説は以下のリンクよりご覧ください。

<ホセ・ルイス・ゲリン本人が語る「アナへの2通の手紙」【イメージフォーラム・フェスティバル2014ティーチイン】 - simonsaxon.com

関連リンク

カタルーニャの映画作家ホセ・ルイス・ゲリン The Catalan filmmaker José Luis Guerin

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