小津安二郎「彼岸花」レビュー

Post Date:16/02/2016 Modified Date:

  

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小津安二郎の「彼岸花」を観ました。

1958年に公開されたこの映画は、小津監督による初のカラー作品。とても有名な作品なのでもはやあらためて語るべくもないとは思いますので、あらすじは外部ページから引用させていただきます。

大手企業の常務である平山渉(佐分利信)は、旧友の河合(中村伸郎)の娘の結婚式に、同期仲間の三上(笠智衆)が現れないことを不審に思っていた。実は三上は自分の娘・文子(久我美子)が家を出て男と暮らしていることに悩んでおり、いたたまれずに欠席したのだった。三上の頼みで平山は銀座のバーで働いているという文子の様子を見に行くことになる。
その一方で平山は長女・節子(有馬稲子)の良縁に思いをめぐらしていたが、突然会社に現れた谷口(佐田啓二)から節子と付き合っていること、結婚を認めてほしい旨を伝えられて閉口する。さらに平山の馴染みの京都の旅館の女将・佐々木初(浪花千栄子)も娘・幸子(山本富士子)に良い縁談をと奔走していたが、幸子には一向にその気がなかった。
平山は三上の娘・文子には理解を示す一方で、自分の娘・節子の結婚には反対する。平山の妻・清子(田中絹代)や次女・久子(桑野みゆき)も間に入って上手く取りなそうとするが、平山はますます頑なになる。そこへ節子の友人でもある幸子が現れ、平山に自分の縁談について相談する。が、それは節子の結婚のための芝居だった。結局、平山は娘と谷口の結婚を認めて彼女らのいる広島に向かうのだった。

引用元:彼岸花 (映画) - Wikipedia

小津はやっぱり喜劇作家。

「彼岸花」は、内田樹さんの著書「街場の文体論」で、紋切り型の表現を使っても発する人間によって表現されるものは違う、というようなことを示すための例として佐分利信演じる平山渉の劇中冒頭に出てくる披露宴での挨拶をとりあげられていたことでその存在を知った気がします。まあそれはともかく、小津っていうとやっぱり「東京物語」のイメージがあったり、世界から評価される映画界の巨匠的な見方をされたりしているので、どうしても荘厳な文芸作品を撮る監督だ、みたいに捉えられている気がするけど、どちらかというと喜劇を撮る監督と言ったほうがしっくりくる気がする。そういいたくなるくらいコメディタッチの作品が多いと思う(「お早う」もそうだし「生まれてはみたけれど」「淑女は何を忘れたか」などもそんな感じ)。言ってることとやってることが真逆とか、起こってほしくないことが起きる、とかの超基本的なギミックばかりで構成されているこの「彼岸花」もそのうちの一つに入ると思います。やってることはすごくベタなのにとても笑えるのは、極限まで端正に練られた画や台詞によって笑いどころが際立つかたちになっているからかもしれません。

特に結婚を親が面倒見るのが当たり前の時代に恋愛結婚しようとする娘と、それゆえに仲違いしたその父である友人の仲を娘側の心情に与しながら取り持つような行動をしたすぐあとに、自分の娘が自分を通さずに勤め先の同僚と結婚する意志があることを知って激昂する佐分利信の姿は、迫力がある分だけ余計に可笑しかった。そして彼がどのように考えようとも、結局は周囲の女性たちに振り回され、ふてくされながら彼女たちの思うがままに行動してしまうところなんかも最高。ウディ・アレンの映画のタイトル「地球は女で回ってる」が頭に浮かびました。

キャストでいうと、公開の20年前だったら桑野通子がやってそうなおませな女の子(ちょうど「淑女は何を忘れたか」で斎藤達雄演じるドクトルを振り回す節子みたいな)役を娘の桑野みゆきがやってるのはとても感慨深いですし、そして同時代桑野通子がやってなかったときによくおませな女の子役をやっていたイメージのある田中絹代が桑野みゆき演じるちゃーちゃんの母親役、というのもすごくいいですね。

あと小津初のカラー作品だからか、やかんに限らず至る所赤だらけなところや、それとは別にゴルフ場のクラブハウスで中村伸郎が飲むコーヒーのカップがあまりにでかすぎる(画面のバランスでみるとちょうどいい)ところなども素晴らしいです、彼岸花。小津のカラー作品では一番好きな作品かもしれません。

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