Surréalisme

シュルレアリスムを通して見る花、木、森。【B&B巖谷國士&丹所千佳トークイベントレポート】

2016/03/18

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巖谷國士さんも寄稿している丹所千佳さん編集の雑誌「mille」。初版ほぼ完売だとか!

4/19(土)に下北沢にある本のセレクトショップB&Bにて行われた、巖谷國士さんと丹所千佳さんの対談イベントに参加してきました。

幻想植物園 花と木の話
巖谷 國士
PHP研究所
売り上げランキング: 93,969

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今回お話を聴けたお二人の簡単なプロフィールは、B&Bのイベント告知ページに載っていたものを引用します。

巖谷國士(いわや・くにお)
1943年、東京都生まれ。フランス文学者、評論家、作家、写真家。
訳書にアンドレ・ブルトン『ナジャ』、
著書に『シュルレアリスムとは何か』『〈遊ぶ〉シュルレアリスム』など多数。
 
丹所千佳(たんじょ・ちか)
1983年、京都府生まれ。編集者。
新書の編集を経て、現在は月刊女性誌『PHPスペシャル』に携わる。『mille』編集長。
 

引用元:巖谷國士×丹所千佳 「私の植物誌~シュルレアリスムの視点」 『幻想植物園 花と木の話』 (PHP研究所)刊行記念 | B&B

この二人によるB&Bでのトークイベントは二回目。昨年11月に丹所さん編集による、巖谷さんも寄稿している文芸誌「mille(ミル)」の刊行の際にも行われました。今回は丹所さんが編集を担当した巖谷國士さんのエッセイ集幻想植物園 花と木の話の刊行を記念しての開催、ということでした。

イベントレポート&感想。

自分の話で申し訳ないですが、巖谷國士さんによる講演を聴きに行ったのは今回でたぶん6回目くらい。初めて参加したのは、2011年に国立新美術館で開催された「シュルレアリスム展」のときに行われた講演で、最初の予定開催日が震災の翌日で延期になってしまい、後日自粛ムードが漂うなか、何とか開催されたことを憶えています。

巖谷國士さんにとっても東日本大震災というのはかなり大きな事件だったらしく、僕が参加したすべての講演で必ずそのことに触れています。この日も(巖谷氏ははあまり断定的なものの言い方をする人ではないのですが)「東日本大震災はまだ続いていると思っている」と述べるなど、常に彼の中でどこかに居場所を持っているような出来事であることが強調されていました。

そんな話が出たのも、もちろんただそれを講演のメッセージとして言いたかったからではなく、今回刊行された「幻想植物園」に関係があるからに他なりません。このエッセイ集の基となったphpスペシャルでの連載「わたしの植物史 花と木の話」が始まったのが2011年の1月。連載開始から3ヶ月で震災が起こり、巖谷氏は文章の書き方、というより方針を少し変えることにした、ということです。連載前の段階では、身近な花、神話や物語に出てくる花、博物誌やエコロジー、ガーデニングなど文明的な視点から考えて変な花、というのを念頭に置きつつ、巖谷氏の思い出を中心にして、それぞれの要素を散りばめるかたちのエッセイを書いていくことにしたそうですが、それにくわえて震災への想い、という要素が上乗せされたかたちになったという。

単行本には36本のエッセイが収録されており、それぞれのエッセイには1月から12月までの月が付されて、一冊を読み終えることで雑誌での連載期間と同じ3年間の月日が流れる、というような構成になっています。もちろん、エッセイはそれぞれの月にあたる季節や時季にあわせた植物について書かれているのですが、実際に書かれた時季はその限りではなかったようです。それこそ、2011年7月のエッセイである「さくらんぼ」は震災直後に書いたものだそうで、巖谷氏曰く「震災があるとさくらんぼについて書きたくなる」とのことでした。それはなぜか、というのは是非実際に読んで確認してほしいものですが、イベントで巖谷氏自身は、第一に自分が一番好きな果物であること、そのきっかけとなった第二次世界大戦中の山形での疎開、そして山形が東北地方であることが大きいのではないかと考察していました。

「さくらんぼ」についてのエッセイは震災からの影響が色濃く感じられる最もわかりやすい例の一つですが、そのほかのエッセイにもところどころ散りばめられている、とのこと。例えばどのエッセイも、巖谷氏のライフワークとも言える旅の思い出が語られることがしばしばあるのですが、それらも国内、国外問わず北半球、もっと言うなら東京より北側の場所が多いことなどもそうかもしれない、と巖谷氏は仄めかしつつ、さらにそれは書いてる最中に北の国や地域を訪ねることが多かったからかもしれない、ということも付け加えていました。

巖谷氏を通して見る「植物」とは。

そのほか連載中に監修作業をしていた「森と芸術」展(2011年に東京都庭園美術館にて開催)との関連にも触れつつ、巖谷氏の体感する「植物」の魅力についても語っていました。エッセイにも書かれている「かすみ草」が大好きで、それは子供の頃の思い出がきっかけとなっている、という流れから、巖谷氏ら以下のように徒然と語り出します。

「好きな理由が子供の頃の思い出に結びついている、というと"個人的"なものと想われるますが実はそうではなくて、実はみなさんの思い出でもあるのではないかと想います。花とはそう言うものですね。
花を見ていると不思議な気持ちになり、色んな思い出が浮かび上がってくる。そういう感覚というのは普遍的なものです。その理由というのは、人間は誕生以来、植物とともに生きてきた。植物によって人間は支えられ、教育されてきたともいえる。そして人間の誕生以来の記憶をとどめている植物を見て感じる不思議な気持ちというのは、ノスタルジアと言ってもいい。しかもそれは個人的な郷愁ではなく、すべての人にとって何かしら懐かしくて切ないもの、という意味でのノスタルジア。そういえばタルコフスキーの映画にも「ノスタルジア」というものがありますね。それは人間があるときから失ったものを懐しく思い切ない気持ちになる、という感情です。そして失ったものというのはやはり森といえるでしょうね。
キリスト教のアダムとエヴァ(イヴ)の話にもありますが、10万年前に人類(ホモ・サピエンス)が誕生して森とともに暮らしていたのですが、やがて農耕を始め、文明を築くなどして、運命的にそれを放棄したのが人類です。
花をみると、その失ってしまった森とともに生きる記憶、それを懐かしむ感情を喚起するのではないか。
わたしは今回、その辺に気を使って、個人的な思い出を通して、みんなにもノスタルジアを感じ取ってもらえるような、普遍的な感情を呼びおこすような文章を書こうと思ったのです」

おそらく、この発言が今回のトークイベント一番のハイライト、と言えるのではないでしょうか。人類にとってのノスタルジアを呼び起こす装置としての花、植物。エッセイ集を書くにあたってのモチベーションや彼自身が植物が好きな理由など、すべてを網羅しているかのような素晴らしい投げかけでした。

最後に。

今回のトークイベントでは、ほかにもエッセイ集の各文末に入れた写真のことや、これまた雑誌連載中に監修を担当した「遊ぶシュルレアリスム展」、そこで語られたレヴィ・ストロースの提唱するブリコラージュについて、あるいは「mille」に掲載された岡上淑子さんのコラージュの話、最近の雑誌の話、恐竜、まさかの進撃の巨人まで、あまりに多岐にわたる事柄に触れては離れていく、しかし同時にそれらすべてがある一点でつながれているようなお話を聴け、とても興奮する体験ができました。巖谷國士氏のボキャブラリーを借りるなら、彼の記憶をたどる旅、あるいはアナログ(類推)思考に基づく記憶のブリコラージュ(寄せ集め)、という感じ。

ちなみにこれは特別なことではなく、巖谷國士さんの講演はこのようなスタイル、様々な話題が浮かんでは消えるかたちで行われていて、たとえ扱われているもの自体に興味がなくても、単に話芸を聴く会としてかなり楽しめる講演だと思います。
とはいえ、巖谷氏の即興で色々な話が予定調和なくすすんでいくので、ブログなんかにまとめるのはとても大変でした...。なので、もしこのブログを読んで巖谷氏に興味が湧きましたら、是非一度講演に足を運ぶことをお勧めします。

おあつらえ向きに、なんて言ってしまうとあまりに独善的な感じがしますが、エッセイ集発売記念講演はこれから吉祥寺の花屋さんや京都にて順次行われる予定みたいです。巖谷國士をめぐるHPというページに情報が載っていましたので以下に引用しますが、刮目されるべき話が聴けること請け合いなのでみなさんぜひ。

〜『幻想植物園 花と木の話』(PHP研究所)刊行記念〜
①2014年4月19日(土)15:00〜@下北沢 本屋B&B
 トークイヴェント「私の植物誌〜シュルレアリスムの視点」
 日 時:2014年4月19日(土)15:00〜
 会 場:本屋B&B 世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F 
②2014年5月18日(日)15:00〜16:30@吉祥寺 ロビニエ
 特別講演「花と木のノスタルジア ロビニエの植物誌 4」
 日 時:2014年5月18日(日)15:00〜16:30 ¥2,000
 会 場:ROBINIER Gallerie de fleurs [ロビニエ◇花のギャラリー]  
     武蔵野市吉祥寺本町4-6-2 SATOH BLD 1F 
     吉祥寺駅より徒歩7分
 要申込:info@robinier.jp /0422-27-5638
③2014年5月23日(金)19:00〜@京都 恵文社一乗寺店
 トークイヴェント「花と木のシュルレアリスム」
 日 時:2014年5月23日(金)19:00〜 ¥1,500
 会 場:恵文社一乗寺店 京都市左京区一乗寺払殿町10
 要申込:http://www.cottage-keibunsha.com/
④2014年5月24日(土)15:00〜@京都 ギャルリー宮脇
 特別講演「庭園とは何か シュルレアリスムの視点」 
 日 時:2014年5月24日(土)15:00〜
 会 場:ギャルリー宮脇 京都市中京区寺町通二条上ル東側 
     京都市役所前駅より徒歩7分
 要申込:聴講料、申込方法はおってお知らせいたします。

引用元:巖谷國士 - Mont ★ Analogue 巖谷國士をめぐるHP

次回は幻想植物園自体の本の感想なんかを書いてみようと思います。

関連リンク

巖谷國士 - Mont ★ Analogue 巖谷國士をめぐるHP

B&B

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