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ブランカニエベス(監督:パブロ・ベルヘル)レビュー。米国マナーなスペインの白雪姫。

2016/10/04

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パブロ・ベルヘルの「ブランカニエベス」をやっと観られた。

Blancanieves

2013年公開の映画なのにモノクロスタンダード作品。BGMは付けられているが、俳優の口が動いたあとに字幕が入る、所謂"サイレント"映画でもある。 スペインのオスカーとも呼ばれるゴヤ賞で作品賞、脚本賞などを受賞している。

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21世紀に作られたサイレントムービーといえば、おのずとミシェル・アザナヴィシウス「アーティスト」を思い出してしまうが、アザナヴィシウスの映画が黄金期のハリウッドに対して敬意を表した作品だとすれば、「ブランカニエベス」は同時代のヨーロッパで作られた映画に対するオマージュといった感じ。実際にベルヘルはこの映画について「ヨーロッパのサイレント映画へのラブレターだ」とコメントしている。そういう作品は得てして軽率なアナクロニズムに堕してしまう危険性を孕んでいるが、野外でのクレーンを使った撮影や、手持ちカメラで動きながら人物を捉える場面など、現代ならではの映像を織り込むことで単純な懐古趣味ではない作りになっていた。

ストーリー的には、グリム童話の白雪姫を原作にしているダークファンタジー、という説明がつけられているこの映画。とはいえ、舞台が1920年代のスペイン・セビージャ、主人公の名前はカルメンで、そんな彼女はゆくゆく闘牛士になる、という大胆な翻案によって、大まかなストーリーやキャラクター以外はほとんど原型をとどめていない。そして採用されたストーリーすら、われわれに馴染み深い毒りんごを食べた姫に王子様がキスをして目覚める、という某アニメーション映画会社が植え付けた一般的白雪姫と比べるとだいぶグロテスクな説話感が強いため、この映画にディズニー的ななにか、幸せな結末や勧善懲悪、わかりやすいカタルシスなどを期待すると痛い目にあうと思う。

さてそんな「ブランカニエベス」ですが、ヨーロッパ映画に対するオマージュという監督の言葉とは裏腹に、とても米国マナーな映画だったと思う。構造主義的分析に耐えうるようなモチーフ、たとえばキリスト教のイコンや鍵穴からのぞく倒錯的行為など、スラヴォイ・ジジェク垂涎のシーンがたくさん出てくる点が特に。あとやたらと外側からみたステレオタイプなスペイン的モチーフ(フラメンコや闘牛などのわかりやすいもの)が前面に押し出されていたのもそんな感じがする。監督バスク人なのに。さすがニューヨークの大学で映画制作を学んだ映画人だなあという感じ。あるいは登場人物が喋っているのは明らかにスペイン語なのに字幕で出てくるのは英語だからそう思ったのかもしれませんが。

そしてそれとは別に、一度命を狙われたあと主人公のカルメンが拾われる こびとの闘牛士たち(旅芸人のように馬車でいろいろなところを回って興行している)にはやっぱりフェリーニを思い出さずにはいられなかった。小人の芸人といえば中世の頃からピエロだと決まっているし、フェリーニは自伝で「できることなら1920年代に生きて映画を撮りたかった」と言っていたしね。

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