マルクス・ガブリエル「なぜ世界は存在しないのか」の雑然とした感想

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最近「 これからの我々はドイツに学ぶべき…! 」なんて明治時代の一高生みたいな想いを強くしていることもあり、そうなったきっかけのひとつであるTV番組「 欲望の資本主義 2018 」でチェコの経済学者トマス・セドラチェクとともにウーマンラッシュアワーも真っ青な政経漫談を繰り広げた、1980年生まれにして2009年からドイツ・ボン大学の哲学科教授を務める若き俊英、マルクス・ガブリエル著「 なぜ世界は存在しないのか 」の日本語訳を読んだ。

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内容は西洋思想、とくにギリシア哲学やドイツ観念論をベースに 物理学、理論数学、人文科学など様々な分野のメソッドを取り入れながら、いまや強大になりすぎてしまった宇宙の存在やそれを包括するひとつの真理を想定する自然科学の考え方を思想的権威の座から引きずり下ろし、また「 この世に存在するのは個人の解釈のみ 」といったポストモダンの考え方を批判的に発展させた"あたらしい存在論"を「 世界は存在しないがそれ以外のすべては存在する 」というキャッチーな命題とともに軽やかに論じていく、といった感じ。論旨はこの本を読む以前よりわたしが興味を持っていたフラクタル図形などとも接近しており「 これはまさしくわたしのための本だ 」とうまく勘違いさせられた、というか、この本のボキャブラリーを借りると「 この本を読んでいた当時のわたしという"意味の場"( Sinnfield )において"対象"である本書はわたしのための本として"現象"した 」ので、( 彼の思想が世界の多義性を真正面から保証していることも含めて )さまざまな視点であふれているこの本を読めばあなたもこの本があなたのための本だと思わせられるに違いない。
どなたかは本書を指して「 ポスト・ポストモダンの思想書 」と称していたけれど、確かに「 こうしなければならない 」とか「 人類の発展に寄与するためにすべきことはひとつである 」とか、逆に「 人生に希望なんてない 」「 決められたことを着々と遂行していくしか生きる道はない 」とか考える人が目立ちはじめ、なにかと閉塞感ただよう現代に強く求められている思想なんじゃないか、と無責任に断言したくなるくらいの説得力は持っている。

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本筋とは関係ないところでは、自然科学の枠組みから抜け出せず近代的ニヒリズムに堕する人を「 宇宙空間の豚 」とニーチェのフレーズになぞらえて表現するなど文芸的にも楽しく、( スラヴォイ・ジジェクや内田樹など現代の思想家や研究者は大抵そうだけど )映画やTVドラマ、現代美術など身近なポップカルチャーを例にとってそこに現れる哲学的要素を自身の論にフィードバックして丁寧に語ってくれるサーヴィス精神も素晴らしい。一元論の矛盾を説明する最後にハリー・ニルソン「 One 」の歌詞から「 The one is the lonliest number that you'll ever do 」を持ってくるかっこよさたるや。こういうのは現代を生きる我々にとってはありがたいが、例えば( この本ならおそらく読まれることになるだろう )200年後の読者にとってはどう捉えられるのだろうか。誰か200年後の読者に詳しいかた教えてください。

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