辻林美穂「Clarté」リリース記念インタビュー③〜本人によるアルバム収録曲全曲解説〜

Posted :20/04/2016 , Modified :

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辻林美穂さんアーティスト写真

2016年4月20日、待望のデビュー・アルバム「Clarté」をリリースする辻林美穂。2014年、坂本龍一氏の「RADIO SAKAMOTO」にて「あぶく」が、tofubeatsのプログラム「OMG BEST ALBUM EVER」で「You Know…」がそれぞれO.A.されたことをきっかけに一部メディアや耳の早い音楽ファンの間で話題となり、以降声優・歌手の悠木碧さんのアルバム「イシュメル」への楽曲提供、ネットレーベルAno(t)raksのコンピレーション・シリーズ「Light Wave」への参加、Tomgggの楽曲「Butter Sugar Cream」へのボーカル参加をはじめとした他ミュージシャンとのコラボレーションなどを経て、着実にその知名度や活動の幅を広げている。現在盛り上がりをみせるシティ・ポップのリヴァイヴァル的な動きのなかに突如現われた新星としての脚光を浴びながら、緻密に構成された自作の打ち込みサウンドではソングライティングの才能を発揮、かと思えばそのキュートな歌声で多くの人を魅了するなど、じつにさまざまな顔を持つ彼女が、現在の彼女になるまでにどのような道をたどってきたのか、そしてこれからどこへ向かっていくのか。彼女の音楽的キャリアを紐解きつつ、今回のデビュー・アルバムリリースにいたるまでの道筋を語ってもらった。(ご本人によるアルバム収録曲の解説もあります)

インタビューその①はこちら
インタビューその②はこちら

辻林美穂インタビューその③

アルバムのタイトル・ジャケットについて

Q:今回のアルバムタイトル「Clarté」の由来を教えてください。

辻林美穂(以下T):Clartéは、フランス語で「透明な」って意味があるんですけど、デビュー・アルバムだし、まだ世間的には何色にも染まっていないあたしの音楽を聴いてください、というメッセージを込めてつけました…っていうのはじつは後付けなんですけど(笑)
まず自分で自分の音楽のイメージを考えたときに、日本語でも英語でもないと思ったので、なにか別の言語でタイトルを付けたいなというのがあって。それで、以前楽曲提供をさせていただいた悠木碧さんの作品のタイトルが全部フランス語だったので、フランス語にしようと決めました。あと大貫妙子さんの「クリシェ」に響きが似てるし、その辺もイメージしています。
ていうか、実はギリギリまでタイトルを決めてなくて。この日のミーティングまでに決めなきゃヤバい、っていう日の当日、ミーティングに向かう途中の電車のなかで「フランス語 きれい」とかで検索しながら出てきたのが「Clarté」で、あ、いいじゃんコレ、と思ってこのタイトルにしました。必死に絞り出したんです。

Q:(笑)。それにしては良いタイトルですよね

T:ありがとうございます(笑)Happy Machineさん(maltineから作品をリリースしているフランス出身のトラックメーカー)にも「Clartéってことばは香水とか綺麗なものに付けるイメージがあるし、つばしのイメージにもあってるね」って言われたので、ホントにこの言葉を選んでよかったなって思いました。

Q:辻林さんのオフィシャルなメインビジュアルにもなっている、ジャケット写真も美しいです。

T:この写真は熊谷直子さんというカメラマンさんに撮影していただきました。ツイッターを見てくれてる方はご存知だと思うんですけど、わたしがある期間(2016年1月31日〜2/10まで)ストイックなダイエットをしていたのは、この写真を撮るために熊谷さんに言われていたからです(笑)熊谷さんは女の子の魅力を引き出してくれるカメラマンさんで、わたしの雰囲気とか性格とかにあわせて、かなり細かく指示をしつつ撮影してくれました。メイクを担当してくださったKohey Iwasakiさんも含めて、二人でアルバムのビジュアルに関して全体的な雰囲気を作っていただいた感じになってますね。

アルバム全曲解説

1.あさひ
大学2年生くらいに書いた曲です。このアルバムに入っている曲のなかでは一番古いものですね。当時はまだ作曲家志望が強かったのでボーカル入りの曲は全然作ってなかったんですけど、「まあ在学中に1曲くらい歌モノ書いておきたいな」と思って作りました。でも作詞はしたくなかったので、ポエマーになってしまった(笑)地元の幼なじみの友人に頼んで書いてもらいました。でも、あまりにも曲が短いのでデータだけとってあってどこにも発表していなかった。アレンジしたのはもっとあとで、ちょうど山ごもりをしてた時期ですね。そのとき弦楽器のカルテットのアレンジにハマってて、あたらしく買ったDTMの音源とかも使いたかったので、ストリングスがキレイに聴こえるようなアレンジにしました。

2.あぶく
卒業制作のために大学4年生の秋に映像作品につける曲として作った曲のひとつです。babiさんのボタニカルってアルバムを聴きながら、こんな雰囲気にしたいと思いながら書きました。歌詞は「二人でやってたのにさよなら」っていう内容でなんですけど、これは中学のとき両親が離婚して母親と二人暮らししていた時期があって。そしてその二人暮らしもリアルガチ暗い家庭の事情で続けられなくなって別の人と再婚していたた父と暮らすことになり、母親とはそこから今までまだ一度も会ってない状態なんですけど、それがわたしのなかで結構辛い記憶だったので、曲にして昇華してしまおう、という感じで作りました。それだけ思い入れが強い、わたしの内面に深く関わっている曲なのでいまはこの曲がわたしの音楽における”顔”だと思っているし、だからこそ坂本龍一さんに評価してもらえたことはホントに嬉しかったですね。

3.Paranoia
Light WaveのVol.2で発表したものを再録音して収録しました。わたしのなかでは「あさひ」と「あぶく」はセットになってるので、実質この曲が2曲目のイメージですね。これはLight Waveに入れるってなった時に書き下ろした曲で、山ごもり期のときに書いたものです。大学を卒業して、みてもらえる先生がいない状態、完全に独りで書く初めての曲だったので、めちゃくちゃ不安と戦いながら作りました。なので、Light Waveのときはシンリズムくんがギターを弾いてくれてすごく心強かったです。歌詞は実体験に基づいてて、当時好きな人がいたもののなかなか上手くいかず、恋が成就しなくてツラい、みたいな想いを綴ったんですけど、それを赤裸々に話しすぎたらちょっとかっこ悪いかも、と思って。「この歌詞に書いてある恋愛のハナシはホントじゃないですよ」っていう想いを込めてパラノイア(日本語で”妄想症”、”虚言癖”の意味)というタイトルにしました。あぶくもそうですけど、詞は実体験に着想を得て書くことがほとんどですね。

4.きみととく
坂本龍一さんのラジオで「あぶく」がO.A.された直後に、とある映像作家さんが「いっしょに作品を作りませんか」と声をかけてくださって作りはじめた曲です。その作家さんから「人間じゃない男女ふたりが生活してて、違う生物なのに大切だと思えたり、理解しあえることがあるのはなぜだろう」というテーマをもらって、それにそって書きはじめたので、タイトルの「とく」には解明する、という意味をこめています。作ったものの結局採用はされなかったんですけど、個人的には曲もアレンジも気に入ってるので今回アルバムに収録することにしました。Hercelotさんのリミックスもすごく気に入っています。
この曲と悠木碧さんのために作った「SWEET HOME」(「イシュメル」に収録)はほとんど同時期に作っていたんですけど、この二曲は鉄筋・木琴の音のかわいい音とか、ギターを使わないとか、クラシカルな楽器の音の散りばめかたとか似ているところがあって。この二曲で使ったそういったテクニックが以降の作曲にも生かされているので「これが自分らしい音楽」と呼べるような曲の作り方をつかむきっかけになった曲でもありますね。

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5.Pararell Love
録音風景をツイキャスで中継してた曲なんですけど、そのときから大幅にアレンジを変えました。曲は元からとあるコンペのために作ってあったもので、歌詞は宇宙ネコ子のネム子さんにお願いしました。はじめに作った時点ではボサノヴァ風にゆったりとした雰囲気の曲にしようと思っていたんですけど、ネム子さんにいただいた歌詞がものすごくかわいいと思って!この歌詞を乗せるならツイキャスでやってた(ゆったりとした)アレンジでは少しおとなしすぎるかなと思ったし、あと子どものころジャズを少しだけやっていたこともあっていつかジャズ・テイストのアレンジをやってみたいと思っていたので、ここで思い切ってやっちゃおう!と。締め切り直前で大幅にアレンジを変えたので大変だったし、聴き返してみるとところどころ荒い部分もあるんですけど、今は変えてよかったなって思っています。

6.You Know…
一番キャッチーというのもあって、これまでにわたしのことを知ってもらうきっかけになることが一番多かった曲ですね。大学のとき作曲を教わっていた先生に富田ラボfeat. ハナレグミの「眠りの森」を教えてもらって「めっちゃかっこいい!こんな曲わたしも書きたい!」と思って書きました。大学の先生にアドバイスをもらいながら作った曲なので、わたしのテイストが全編にわたって押し出されている、というような曲ではないと思います。サビ前のメロディーとかはいまのわたしのなかからは絶対に出ない(笑)
大学に進んで初めて本格的に作ったボーカル入りの曲だったので、韻を踏むとか母音とメロディーの組み合わせとか、歌詞のテクニック的なところにも気をつかって書いたので、結構苦労しました。歌詞には、大学3年生のときにバドミントンサークルをわたしといっしょに立ち上げた女の子が、立ち上げから1ヶ月で失踪して、あらゆる責任を私が負うことになってしまったことに対する「ふざけんな!」という気持ちをこめました(笑)

7.No more 速度制限 feat.満員電車
タイトル変えようと思ってたんですけど、森川さん含めまわりの大人たちに「普通じゃないほうがいいからこれでいこう」って言われて、そのままでいくことにしました(笑)これはわたしがシティ・ポップを書く人だ、というイメージが付きだしたころに作って、自分としてもシティ・ポップっぽさを出そうと意識しています。”いい感じ”に聴かせることを狙わず、コード進行とか、サビのパートに行く前にちょっと歌ってから入るとか”わたしの好きな感じ”を詰め込んだ曲ですね。歌詞はタイトルどおり満員電車に乗ってるときに感じたこととケータイの電波の速度制限と格闘してたときのことが基になっていて、一見するとセクシーな感じに読めるよう書きました。アレンジに関しては、私のデモをもとにサポートのバンドメンバーがアレンジしたこの曲のライブver.をベースに、石井マサユキさんが手を加えていったかたちですね。

8.うそつき
元々はほかのシンガーさんに提供するつもりで書いた曲なんです。自分ではめちゃくちゃ気に入ってて「ああいい曲書けたなー」って思っていたんですけど、結局採用されず、初めて「なんでこの曲の良さがわかんないんだー!」って強く思った記憶があります。「きみととく」みたいに、いわゆる”打ち込み系”の曲における自分らしさを出せるやり方で作った曲ですね。この曲も歌詞はネム子さんに頼んでいるので、世界観をかっちりと作り込んではいないんですけど「私の世界に入ってこないで!」みたいなイメージで作りました。ボーカルも「私の世界にはいてほしいけど近づいてこないでほしい」っていう感じで突き放すような歌いかたをしています。曲のはじめあたりの拍子をランダムな感じにしたのは、音大卒感を出したくて(笑)

9.bora zoo
大学の卒業制作で作ったんですけど、そのときホントやる気が起きなくて。「やばいやばい」って言いながら書いた曲ですね。歌詞はその当時の、作曲しながらサボってるときの自分をそのまま詞にした感じですね。「必ずやるよご飯食べたら」って言いながらも結局やらない、みたいな。2番では料理の話も出てくるんですけど、これは音楽やってる人たちの間で「作曲と料理って似てるよね」って話をよくしてて。材料とかちゃんと考えて調合して、美味しいものができた、みたいな話が作曲みたいだよねー、っていう話を友だちからされたんです。でもわたし料理できないんでよくわかんなくて(笑)それでなぜか「料理ができないってことは作曲もできないってことじゃないのか!」みたいに思って落ち込んだ記憶があります。「魔法が解けていく 僕にはもう効かない」っていう歌詞は、初めて聴いてハッとさせられた曲でも音楽的な構造がわかってしまうと簡単に自分で再現できてしまって、最初に味わった魔法みたいな感動はなくなってしまってつまらなくなっちゃうこともあるよね、ていう経験があったので、それをそのまま詞にしました。

10.ランデブー・ドライブ
山ごもり期を経て、もう一度東京に出てきたときに作ってあたためていた曲ですね。アレンジは、大好きな竹内まりやさんの「今夜はHearty Party」のイメージに近づけてください、と石井マサユキさんにお願いしてやってもらいました。そこに石井さんがYMOの感じとかも盛り込んでくださって完成したのがいまの音です。歌詞はまずドライブっていうテーマを決めて、竹内まりやさんの「Forever Friends」をモチーフに、高校時代くらいの友だちと久々に会って高速とかに乗ってドライブする、というイメージで書きました。70〜80年代くらいの日本のポップスを意識したアレンジなので、ボキャブラリーも「懐かしのtune」とか「行けるよあたしたち」とか昔っぽいフレーズをあえて選んで書きました(笑)

11.真夏のかけら
学生時代の友人に依頼されて作った曲なんですけど、自分ですごく気に入ってしまって(笑)あとikkubalのツアーについて回ってたときに弾き語りで歌ったことが会ったんですけど、そのとき見てくださった方に好評だったので、アルバムにもいれることにしました。サウンド的には松任谷由実さんの「優しさに包まれたなら」を意識した感じですね。歌詞は遠距離恋愛してる女の子のイメージに「真夏のかけら」っていうタイトルの爽やかさを乗せて書いたんです。恋人と久々に会えるとか、遠くにいる恋人と電話してるんだけど先に相手が寝ちゃって、寝息が聞こえるから彼がどんな夢を見てるのかなと想像する、みたいなめっちゃ乙女な歌詞になりました(笑)わたしの書く歌詞ってだいたい卑屈なんですけどこれはすごくハッピーですよね。大切な恋愛の思い出、みたいな(笑)

12.きみととく(Hercelot Remix)

(Remix担当・Hercelot氏による解説)

僕もトイ/チャンバーな小物音楽が好みなのですが、それ故に"きみととく"は原曲が到達点、これ以上やることは無いと思いました。でも、Remixをしないわけにもいきません。必要なものは揃いきっているので、残るは不必要なものを足していくという方針です。不要な助走、展開、要素と配置。ポップスとして非常に完成度の高い彼女の楽曲に比して、ファインな印象には留まりつつも何かまとまりがない、アンバランスなフェイクポップになりました。それはネガティヴな評ではなく、たとえば日々のハプニングや気付きにもさして強い意味はなく、収束しない無意味のまだら模様に身を溶かしていくことで安息し、分かり合えたような気どまりでもかまわない。意味未満の物たちやすべての違いから、不測な強い気持ちが育ちます。
それはともかく、オルタネイティヴなボーナストラックとして気軽にお楽しみください。

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辻林美穂・近日出演ライブ情報

4/22 (金)「citrus vol.4」
下北沢モナレコード
【出演】 辻林美穂 / カンバス / CittY / (OA)さとうあい 
開場 18:30 / 開演 19:00
チケット前売2000円 / 当日2300円

5/3(火・祝)「シモキタの夜さ」
下北沢モナレコード
【出演】カンバス/ KONCOS / 辻林美穂
開場18:30 / 開演19:00
チケット前売2,500円 当日 3,000円

辻林美穂・ワンマンライブ情報

2016年6月12日(日)
渋谷 7th FLOOR
〒150-0044 東京都渋谷区円山町2−3 Owestビル7F
TEL 03-3462-4466
開場17:30 / 開演18:00
料金 3,500円 *1ドリンク別

Tickets
●7th FLOOR店頭販売: 3/22(月)〜6/11(土)(16:00〜22:00)
●プレイガイド: イープラス
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●7th FLOOR電話予約: 3/22(月)〜6/11(土)
(15:00〜20:00 tel:03-3462-4466)

出演
辻林美穂

主催: Cloudy
協力: P-Vine Records

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