渡辺ペコ「昨夜のカレー、明日のパン」レビュー ドラスティックな展開だけがドラマじゃない

Post Date:09/02/2016 Modified Date:

  

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渡辺ペコさんの新作マンガ「昨夜のカレー、明日のパン」を読みました。

作品情報。

「昨夜のカレー、明日のパン」は「野ブタ。をプロデュース」や「Q10」、「すいか」などのテレビドラマで知られる夫婦脚本家ユニット・木皿泉による初の小説。2014年にはNHKプレミアムでテレビドラマ化もされています。そして今回のマンガは、その小説を原作に渡辺ペコさん作画で2014年から昨年にかけてコミックスピカや月刊バーズなどの雑誌で連載され、ここにきて幻冬舎より単行本化されたものです。

作品の大まかなあらすじは、7年前に死んでしまった一樹という男性にまつわる人々、主人公である一樹の元妻テツコや、一樹の死後もなぜかテツコと一緒に暮らしているその父親(劇中テツコにはギフ、と呼ばれている)、ふたりの住む家(一樹の実家)の昔からの隣人であるタカラ、一樹を慕っていた従兄弟のトラオなどが、自覚したりしていたりいなかったりする一樹の存在の大きさを自分なりに咀嚼し乗り越えていく、といったようなものになっています。

渡辺ペコさんの作品では、彼女の初期作品を集めた作品集「ペコセトラ」に収録されている「N浜温泉紀行」が群を抜いて好きだったこともあり、彼女のことを日常におけるファンタジーを描く作家(「変身ものがたり」などにもそれが表れている)と思っていたのだけれど、それから「にこたま」や「ボーダー」などを読んでいくうち、それよりも生活している中で扱いづらい、世間一般的に言われている日常の中では起こりにくいとされている重めの状況(たとえば卵巣がんとか好きになった女性が元男性だったとか)に置かれたとき、本来なら感情を爆発させたいところをグッとこらえて、自分なりにどのように対処していくかということを描いている作品の方が圧倒的に多いことに気づいた。でもどの作品でもその語り口に抑制が効いている(物語を進行させるような主要登場人物が大体冷静な)ところがすごく好きなので(だからこそ女性向け雑誌だけでなく男性向けの誌面にも登場するのだと思う)、最初抱いていたファンタジー作家的な印象とは少し変わってしまったけれど、これからもずっとフォローしていきたいマンガ家のひとりになっている。

そんな渡辺ペコさんが、上に書いたような木皿泉さんの紡いだ大切な存在だった一人の男性の死を乗り越えていくといったストーリーをベースにマンガを描いていくとなったら悪いものになるわけがないですね。登場人物ひとりひとりの心情を細やかかつ冷静に描写しつつ、ドラスティックな展開やカタルシス的なものはなくとも受け手に何かしらのポジティヴな感情を生み出すような作品になっていると思います。わたしは原作にあたってはいないのだけど、もっとマンガ内では描かれていない、たとえばギフと亡くなった息子との関係もたくさん描かれているんだろうなとか、そのほかの人物に関しても(ムムムとか)そうなんだろうな、とかを思わせる、すなわち原作も読んでみようと思わせてくれました。たぶん読みます。読まないかもしれません。

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