岡本仁の考えるAmazonとリアル書店の正しい関係【続・果てしのない本の話刊行記念トークイベントレポート②】

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photo by Akira Ogaki
©Akira Ohgaki

前回のエントリでは、メインのテーマだった「 本との付き合い方 」を中心にしたレポートでしたが、同じトーク中に触れたAmazonとフィジカルな書店にまつわる話も大変印象深かったので、こちらでレポートしたいと思います。

その話は、イベント中、来場者による事前アンケートのなかにあった「 普段本はどこで勝っていますか 」という質問に対して、岡本さんが「 正直に言いますね 」と前置きしながら、最近はamazonでばかり本を買っている、と答えたことがきっかけでした。
さらに彼自身「 ホントはこんなこと言っちゃいけないんだろうけど 」と言いながらの発言であったことから、現時点では一般的でない、少なくともメインストリームではない考え方であるし、多くの人もamazonで本を買うという行為を大っぴらに宣言することを「 言っちゃいけない 」感覚と言うのは共有できる物だとは思います。とはいえそれは表面的な部分においてのみであり、さらに深い部分には、現状を塗り替える何かがある、と思わせるような話でした。

前置きが長くなりましたが、以下に岡本さんの発言の要旨を載せます。

※同じトーク中に出てきた本との付き合い方の話やリトルプレスの話は、また別エントリでご紹介します。ご興味のある方は以下リンクよりお楽しみください。

関連リンク:
岡本仁の読書遍歴、本とのつきあい方。【続・果てしのない本の話刊行記念トークイベントレポート①】
岡本仁が語る少部数出版の未来。【続・果てしのない本の話刊行記念トークイベントレポート③】

岡本仁さんの考えるAmazonとリアル書店。

Q:普段本はどこで買っていますか?

岡本さん:正直に言いますね。いまはほとんどAmazonで買います。それは、Amazonは本を"買う"場所だと思っているから。ほしい本がある時は、どうしてもそれを最短で買える方法を選んでしまうので、Amazonで買う。例えば旅先でこの本がほしい、と思ったらその場で注文して、帰ったときにはもう届いてる、というような感じで使っています。

一方で、書店は本に"出逢う"場所だと思っています。だから面白い出会いを演出してくれる本屋さんには行きます。何を買うか決めてないときに行く。
…でもホントはこんなこと言っちゃいけないんだよね、印刷する、カタチにするのが大好きって言ってる立場としては。
でもホントにそう思ってるんです。本屋さんは面白そうな人が集まってるカフェみたいなものだから、そういう存在であってほしい。

Q:じゃあ、大型書店には行かないんですか?

大型書店にも行きますよ。大型書店でしか出逢わないものもあるし。でも全て揃っています、というようなものを売りにしているような大型書店にはいかない。それを売りにしても意味がないってことがわかっている大型書店は大好きです。

Q:Amazonがない時代はどこで買ってましたか?

Amazonがない高校時代とかは用事がなくても毎日家のちかくの本屋に行って、棚にある本全部憶えてもまだいく、というような感じでした。で、そのあとレア写真集ディグ時代( ※前回エントリ参照 )なんかは、ディグできる書店、M&co.( 松浦弥太郎さんが手がけた移動古書店 )とかアートバード・ブックス( 中目黒にあった書店 )とかに行ってた。そのあとしばらくは本を買わなくなっていきました。
でもAmazonが出来てからまたモノすごく本を買うようになった。だから「 本を買う 」という行為についてはAmazonが出来てからのほうが激しい。ほしい本が自分でわかってるときは、やっぱりAmazonが最短でたどり着ける場合がおおいから。それでやっぱり本って面白いということを再確認もできました。そのかわり、自分がまだ存在すら知らないけどすごく興味が惹かれる本はAmazonでは出逢えない。だから本屋へ行く。Amazonが出来たおかげでぼくはさらに本屋へ行くようになった。

でも世間ではAmazon対リアル書店という二項対立みたいになっていて、どっちかしか良いと言っては行けない空気がある。ぼくにとっては、フィルムカメラとアナログカメラと同じでどっちもいいじゃん、なぜどちらかを選ばなければいけないのか、という感じなんですけどね。「 街場の本屋を救うため、Amazonは絶対使わない 」という人がいるけど、ぼくはそうは思わない。本屋には本屋の役割があり、AmazonにはAmazonの使い方がある。だからといって、Amazonが信頼できる、というのはまた別の話ですよ。だけどほしい本は買えるから使う。

こんな風な考えを正直に口に出す人は、とくに出版業界では少ないですよね。でもそんな人でも資料はAmazonで買ってたりする。
だからAmazonは悪ではないと思う。街場の書店もAmazonに支えられてる部分はあると思いますし。
Amazonがあるおかげで読者人口は増えてるんじゃないかと思うし、本屋さんのもつ特色がはっきりしたということもあるので、これからの書店はそこを目指せばいいんじゃないかと思いますけどね。

最後に。

以上が、イベント中の岡本さんの発言です。Amazonとフィジカルな書店との現在の状況を、出版側とか書店側、あるいはネット側どちらにも寄らぬ視点でずばりと言い表しつつ、それぞれが共存できるヒント的なものが隠されているような、とても刺激的な内容ですね。
最近では紀伊国屋書店が村上春樹の新刊を大量に取り次いでほぼ独占するような流通の仕方をとってネット書店への敵対心をむき出しにしたニュースが業界や世間で話題となりましたが、そのニュースを知って覚えた違和感の所在を明確にするような話だと私は思います。
これ以上岡本さんの発言に関して解説することはなんとなく無粋なことだと思うのでここで終わりにしたいと思いますが、彼のような考え方をする出版業界の人とか、あるいは書店流通に携わる方がもっと増えれば今までとは違う何かが生まれる気がするので、多くの人に上の発言を知ってほしいと願ってやみません。

関連リンク:
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