市川崑の60年代レア作品「青春」をフィルムで観てから、「黒い十人の女」の頃の話も聴いてきた話

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7月14日、有楽町の朝日ホールで行われたイベント「 市川崑の60年代レア作品青春をフィルムで観てから黒い十人の女の頃の話もしてしまう会 」で、市川崑の60年代レア作品「 青春 」をフィルムで観てから、「 黒い十人の女 」の頃の話も聴いてきました。

イベントに関しては以下のリンクを参照ください。

リオ・パラリンピック閉会式の「 東京は夜の七時 」 小西康陽の思いは - withnews( ウィズニュース )

READYMADE JOURNAL » 市川崑監督・60年代レア作品の上映会トークイベントに小西さんが出演!

市川崑の60年代レア作品「 青春 」をフィルムで観る

会場の横断幕。

上映された「 青春 」は、市川崑が監督を務め、谷川俊太郎ほか名だたる人がシナリオに参加した、第50回全国高校野球選手権大会の記録ドキュメンタリー。同監督の怪作「 東京オリンピック 」と同じ手法を用いて撮影されている、といえばどう言った映画か雰囲気をつかめると思う。

この映画は「 甲子園( 高校野球の全国大会 )なんていますぐ廃止すればいい 」という危険思想を持っているわたしのような人間にとってみれば、選手たちの顔( 表情というより顔そのもの )や身体の動作、複数人の連動した動きなどにカメラの照準を定めて野球のスポーツ的な魅力を極力排除し( 送りバントで二塁ランナーがアウトになる、ランナーが塁間で挟まれる、一塁まで走るバッターの足がみんな遅い、などの戦略的ミスやプレーレベルの低さを見せつけるシーンを多く使ったり、茹だる炎天下に高校球児たちが必死にプレーする姿を捉えたシーンのBGMがクール・ジャズだったりするのもその一環か )、そしてそれらのシーンの合間に熱狂する観客の顔や表情を挟むことで、彼らが熱狂しているのは目の前で行われているスポーツではない別の"なにか"なのではないか、という社会的にあまり言及されない感覚を見事に浮き彫りにしているように感じた。

別の"なにか"、と言うのは試合がはじまるまでの前半の48分間で描かれる この映画の主題に大きく関連するものだが、文字にするとなんだか急に胡散臭くなるので、気になるかたはぜひ実際に見て確認してほしい。沖縄の興南高校がフィーチャーされたのも、大会に旋風を巻き起こしたという高校野球史的事実だけが理由では決してないはずだ。皇太子時代の今上天皇( プリンス感すごかった )が印象に残ったのも、タイトルバックののち 荒れ果てた冬の甲子園のグラウンドが映されてはじまるのもまた然り。あるいは「 勝ち負けは結果であり、試合の本質ではない 」というラストのことばにも象徴されてるかもしれない。

「 黒い十人の女 」の頃の話

その後のトークショー。ミルクマン斉藤さんの快活なお話も、もちろん小西さんのたまにぼそっとつぶやいたことが全部ヒットになるお話も素敵だったけど、おなじく登壇されたイヴェント・チームのひとりである( 「 青春 」のDVD化をすすめた人でもある )日活の金山さんが、冷静かつ抑制された口調で変なこと言う人で最高だった。金山さんは「 一年に一回、甲子園にいることだけが人生の楽しみ 」という高校野球マニアながら、正反対なスタンスでこの映画をみたわたしと同じくこの映画を面白いと感じているのが実に興味深い。いい映画とはそういうものですけど。金山さんの今作の「 音 」に対する考えにもわたしはまったく真逆の意見で、生々しすぎて逆にウソっぽいので、絶対ほとんどがアフレコに違いないと思いました。ヤン・シュヴァンクマイエルの観過ぎでしょうか。

それにしても、小西さんも言ってたが朝日ホールの音響の良さにはすごく驚かされたなあ。音響といえば、客入れ客出しのときの小西さんセレクトのBGMがデイヴ・ブルーベックで統一されていたのは何か理由があるのかな。

市川崑の60年代レア作品青春をフィルムで観てから黒い十人の女の頃の話もしてしまう会のzine

イベントzineの初期デザイン。

配布されたzineも楽しく読ませてもらっています。横組なこと、( おそらくこの映画やイベントのターゲット層ど真ん中であろう )シニア世代を突き放す本文のQ数などにニヤニヤし、小西さんが初めて観た市川崑映画2本がわたしの好きな市川崑映画トップ2だったことに驚いた。映画本編のキャプチャが並べられたヴィジュアルな見開きのいくつかのシーンにはデジタルなノイズが出ていた( これはしかたない )。ミルクマン斉藤氏による、ヴィデオ・テープが擦り切れるまで観て書いた感のある長文コラムと、小西さんの市川崑への悪口巻末コラム。甲子園マニアの日活の金山さんによると伝説的監督らしい我喜屋優氏へのインタヴューを読んで、EURO2016でベスト8まで行ったアイスランド代表とその監督ラーシュ・ラーゲルベックに思いを馳せた。

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