レオス・カラックス「ホーリー・モーターズ」レビュー レオス・カラックスの考える映画史

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レオス・カラックスの「 ホーリー・モーターズ 」を観ました。

ストーリーはリムジンでパリの街を周りつつ、見えないカメラを相手に演技する俳優みたいな仕事をしている男のとある一日を追う、みたいな話。一日のあいだに物乞いの老婆になったりモーションキャプチャーしたり暗殺者になったり。主人公の名前はオスカー。表向きは特殊な仕事に向き合う男の苦悩を描いたドキュメンタリーみたいな話ですが、それとは別にレオス・カラックスの考える映画史、もとい映画史と個人史のハイブリッドともとれる。何より主人公の演じる役の数々が引用やパロディで溢れていたし、シネフィルのみなさんにはたまらないと思います。自身の撮った映画のキャラクター再登場させたり、引用の仕方もユーモアたっぷり。ただ、劇中出てくる両手をピースの形にして折ったり伸ばしたりする引用のジェスチャーを頻繁にする女の子は、そのジェスチャー中に怪人に化けた主人公に指を食いちぎられてしまうんですけどね。

その怪人( カラックス作品に以前出てたメルド )のシーンは他にもめちゃくちゃおもしろいのがたくさんあった。ビジネスライクなファッションモデルの吸ってるタバコがアメリカンスピリッツだったり、メルドが彼女の持つドル札を食べたり、彼女の着たドレスをマリアやヒジャブのようにアレンジしたり。あと別のシーンではカーズとトイ・ストーリーのパロディもやっていた。

そしてさらにそれとは別に、一種のユートピア・ムービーとしてみることもできるのがまた素晴らしい。管理され、役を演じさせられる俳優たち。リムジンを運転している女性が仕事を終えたあと緑色の仮面( もしかするとこれもマスクのパロディかも )をして帰路に着くのもなにかと示唆的ですね。まあそれはそれとして、主人公の演じる役のバリエーションに加え、映画の冒頭シーンが映画をみる観客から始まるところからみても、カラックス自身はこの作品において映画について描きたかったのは明白、なんて意味もなく断定してみる。

しかしこういう作品( ゴダールとか )をみればみるほど、監督は観客にただ笑ってほしくて映画を撮っているだけなんじゃないかと思えてくる。映画に限らず、絵画や音楽、ダンスなどに関してもそう。芸術にユーモアは不可欠、ということなのかな、とか無駄に範囲を広げて一般性を持たせようとしてみる。

ともあれ恥ずかしながらカラックス作品初めて観たんですが思いのほか楽しめてよかったな。引用が多い、と聞いていたので映画的な知識がないと楽しめないと思ったのですが、いい意味で予想は裏切られたかたちです。知識があったらもっと楽しめたのだろうな。

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