Itsa Shokoshok Mashu Haradaインタビュー

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6/14にbandcampで2ndアルバム「 Little Day,Bicycle Joy 」をリリースした、スロヴァキアの3ピース・サイケ・バンドItsa Shokoshok( イッツァ・ショコショク )。とっても魅力的なサウンドを奏でながら、耳馴染みがない語感のバンド名や、たびたび繰り返されるčukučukuというフレーズ、イギリス、オランダ、スロヴァキアと3つの国をまたにかけて活動しているという状況、そして日系のメンバーがいるなど、あまりに気になることが多すぎる彼らですが、幸運なことに、バンドのメンバーであるMashu Haradaさんとコンタクトを取ることができましたので、メール・アンケートのかたちでバンドの実態などについていろいろと聴いてみました。

今回リリースされたアルバム「 Little Day,Bicycle Joy 」や、リードトラック「 I'm the One 」MVについては以下のエントリをご覧ください。

スロヴァキアの3ピース・サイケ・バンド Itsa Shokoshokが2ndアルバム「 Little Day,Bicycle Joy 」より「 I'm the One 」MVを公開【Name Your Price】

それでは以下よりインタビューをどうぞ。

Itsa Shokoshokメンバー、原田 真周氏へのメール・インタビュー

Itsa Shokoshok Profile PhotoItsa Shokoshokメンバー写真。左から、Adam,Timmy,Mashu

Itsa Shokoshokについて

-まずはバンドのメンバー紹介をお願いします。

Mashu Harada( 以下M ):メンバーはAdam Bako、Timmy Walshe、そしてぼくMashu Haradaの3人です。年齢は全員19か20才。バンド内では、アダムがギター、ウクレレ、ベース、シンセサイザー、ドラム、ヴォーカル、ティミーがベース、ぼくがギター、シンセサイザー、ドラム、ヴォーカルを担当しています。

-マシュウさんは日本生まれですか?

M:父が日本人、母がスロヴァキア人で、スロヴァキア生まれなのですが、1才の時から15才の時まで日本で暮らしていました。その後スロヴァキアに戻って来てしばらく住んで、今はグラスゴーで大学に通っています。日本人か外国人かを訊かれたら、日本人って答えることが多いです。

-Itsa Shokoshok結成までにいたるストーリーを教えてください。

M:ぼくが15才でスロヴァキアに引っ越してきたとき、アダムと夏の子供向け用の野球キャンプ( 一週間程度のレクリエーショナル合宿 )で出会ったんです。彼はスロヴァキアに来て間もない頃にできた数少ない友人のうちの一人。お互い音楽の趣味が合って一気に仲良くなり、高校は違うところに通っていたんですけど、彼と一緒に音楽をやることにしました。ふたりではじめたバンドはCongress of the Pigeonsという名前だったのですが、そこでやってたサウンドが気にいらなくて、高校を卒業すると同時に活動休止にしてしまったんです。そこから改めて、ぼくたちの奏でたい音を本格的に表現しよう、という決意を持って名前も新たにItsa Shokoshokを作りました。いまの3人組のかたちになったのは、そんなぼくたちの周囲でティミーがいつもベースを持って走り回っていたので、ちょっと手伝ってよ、って声をかけたのがきっかけです。

-前身バンドCongress of the Pigeonsのときは、ジャンルとしてはどんな音楽だったのですか?

M:メロディアスなインディー・ロックをやっていました。そのときはBombay Bicycle ClubReal Estateなどに没頭していて、彼らの音楽の影響をモロに受けたサウンドでしたね。当時、ぼくたちがやってる音楽を自らかっこつけてIndie Shitと呼んでいましたが、振り返ってみると本当に"Indie Shit"だったね、と今では笑って話しています笑

-Itsa Shokoshokというバンド名は、感覚的かつエキゾチックな響きをもつとても素敵なネーミングだと思うのですが、なにか意味があるのですか?

M:ありがとうございます。Itsa Shokoshokは、ぼくたちの作ったことばです。Chokapikというヨーロッパで売ってるコーンフレークみたいな物があるんですが、それを奥歯で噛み砕く時の音がShokoshok( ショコショック )と聞こえるんです。
ある日、ぼくがChokapikを食べながらワインを飲んでいたとき、ワイングラスを誤って地面に落として割ってしまったことがあり、その場にいたアダムの口から"It's a shokoshok"という言葉が出て来たのが最初です。その響きが気に入って、以降いろんな場面でたびたび使うようになり、ついにはバンド名にまで採用してしまいました。
意味は「 物事なるようになっちゃう 」、「 人生で起きることは起きちゃう 」みたいな、Beatlesの"Let it be"と少し似た感じです。

-アダムさん、マシュウさんともに担当する楽器が多いですが、これらは独学で弾けるようになったのですか?

M:アダムは完全に独学ですね。ぼくは日本にいたころにギターと声楽のレッスンを受けていましたが、スロヴァキアに引っ越してからは独学で好きなアーティストを真似しているうちに弾けるようになりました。弾く楽器は曲ごとに担当を変えています。担当する楽器の入れ替わりはとても激しいです。ティミーは基本的ベースなのですが、曲ごと自分に一番合う楽器が変わるっていうのがその理由です。

-イギリス、オランダ、スロヴァキアと3つの国をまたにかけて活動している、とのことですが、バンドの帰属意識はどこにありますか?あるいはどこにもないのでしょうか。またそれとは別に、活動の拠点はどこにありますか。

M:バンドの帰属意識は東欧スロバキア、ブラチスラヴァにあります。バンドメンバー皆そこで知り合って長い事生活していたのもあり、ぼくたちがホームと感じているのはブラチスラヴァです。
ただしぼくはグラスゴー、アダムはオランダ、ティミーはイングランドと、それぞれの国の大学に通っていて、それぞれの場所で音楽活動を続けているので3つの国をまたにかけて活動していると表現しています。夏にブラチスラヴァで集まってるあいだはそこでライブをたくさんします( する予定です )。
またそれぞれの就学期間中も、ライブできるオファーをもらえばそこにいってライブしたいと思っています。ただ、ライブをする事になれば、やはりそれぞれが住むスコットランドかイングランドかオランダか、知り合いがたくさんいるスロバキアになる可能性が高いです。

-現在はどのような音楽活動をメインにしていますか?

M:いまは学校が夏休みで、バンドメンバーで集まれる事が多いので、ブラチスラヴァでのローカルライブに力を入れていく予定です。大学が再開するとまた離ればなれになってしまいますが、そのときはそれぞれの場所でのレコーディングに力を入れて、録音した音楽を送りあい、新しいEP、もしくはアルバムを作っていこうと思っています。ぼくたちが今いる環境を考えると、ライブバンドというより、レコーディング・バンド、という意識の方が強いですね。この夏はそれぞれいま住む場所に帰る前に演奏をたくさんして、新しい方向性と音、だれも見た事のない音楽性を探すのをバンドの課題にしています。

-バンドのサウンドに関して影響を受けたミュージシャンはいますか?

M:バンドメンバー全員が'60〜'70年代のサイケデッリク・ロックの大ファンです。たとえばBeatles後期の、音楽で人を泣かせるような、曲が媒体となって人間の感情を伝えらる音楽を作ることをとても意識をしています。あとMac DeMarcoのリバーヴとコーラスのほどよい組み合わせと、感情がかかりまくった音作りにもとても影響を受けていますね。ほかにも裸のラリーズも大きく影響を受けているミュージシャンのなかの1つです。例えばベースラインの心地よさとか、自分たちのやりたいようにやる、オーディエンスがいってる事は気にせず轟音をかき鳴らすそのスタイルに惹かれています。
いろいろなバンドに影響受けて、ざらけて言ってしまえば真似して頑張ってかっこいい音楽を作るのは簡単な方法で、ぼくたちもよくやってしまいますが、やはりそれは音楽の真骨頂ではないと思います。ぼくたちも含めて、バンドの目指すべき音は今の音楽の世界に衝撃を起こす深い何かではないといけないと信じています。現時点ではどうすれば見つけられるのかはまだわかりませんが、今後色んなエクスペリメントをしていって、それを探し当てるのがぼくたちのバンドの夢です。

-それでは、バンドの目指すサウンドに関係なく好きなミュージシャンは?

M:繰り返しになりますが、バンドメンバーみんな60年70年代の昔サイケデッリクロックの大ファンで、なかでもBeatles、サンタナ、ストロベリーアラームクロックが特に好きです。日本のバンドで今大好きなのは幾何学模様。ほかにもDYGLミツメも好きですね。洋楽ですきなのは、King Gizzard and the Lizard WizardWalter TVなどです。

-バンドのビデオ、歌詞などに「 čukučuku 」というフレーズを多用しているのが散見されますが、この単語にはどういった意味が込められていますか?

M:čukučuku( チュクチュク )は、妖精みたいなものです。ぼくたち自身は、čukučukuに囲まれると、世界と人生との一体感を感じる事ができて、それがぼくたちの音楽作りの手助けになる。ちょっと馬鹿みたいな事をいってるような感じがしますけど、これはジョークではないです笑
とはいえことばで説明してしまうとčukučukuがマジックを失ってしまうので、それぞれがその意味を理解しようとするのではなく、感覚的に掴んでほしいものですね。

-ではčukučukuについてもうひとつだけ。「 チュクチュクが現れる( čukučuku appears ) 」と「 チュクチュクになる( get čukučuku ) 」とではどちらの使い方がより正しいと感じますか?

M:どちらも正しいです!笑 ただ、もし一番合う動詞を選ぶとしたら"Feel čukučuku"だと思います。

アルバム「 Little Day,Bicycle Joy 」について

-今回のアルバム「 Little Day,Bicycle Joy 」は、全体を通してなにかしらのコンセプトがありますか?

M:コンセプトと言えるかどうかはわかりませんが、バンドメンバーがお互い離ればなれでも音楽は一緒に作れるというのは21世紀の音楽作りじゃないかと思うので、このアルバムでそれを実践してみようという目標は最初からありました。
一つ一つの曲は、彼女にふられちゃって悲しい、じゃあこの感情を音楽にしようとか、ただ曲を録音したいと思ったりとか、夜寝れないな、ひとりぼっちだな、さびしいな、という気持ちとか、そういう感情をもとに書いた曲ばかりです。

-アルバムの「 Little Day,Bicycle Joy 」というタイトルはどういった経緯でつけられたのですか?上に挙げたような「 日常的な感情を歌にする 」という曲制作の雰囲気を投影しているのでしょうか?

M:アダムとアルバムの名前を決定するとき色んなアイデアを出していたのですが、そのなかの一つで、まず"Bicycle Day"というフレーズが挙がりました。これは4月19日に指定されている文字通り自転車の記念日なんですが、その日付はアルバート・ホフマン博士がLSDを発見した日でもあるんです。そしてちょうどそのフレーズが出たとき、部屋の中でLittle Joyというバンドの音楽がかかっていて。そこでアダムがその二つ、Bicycle DayとLittle Joyとをシャッフルして"Little Day, Bicycle Joyっていいんじゃない?"と言い出して、そのままそれをタイトルにしたんです。後付けで理由を加えるなら、Little Dayが日常感、人生が年を取るたびどんどん早く流れていってる事を暗示していて、Bicycle Joyは"Bicycle Day"からの連想で、サイケデリック音楽の喜びを表している、と言えると思います。

-アートワークを担当しているのは誰ですか?

M:これもアダムです。彼は実は芸術家で、よく油絵を描くのです。

-バンドの曲は英語詞、日本語詞が多いですが、スロヴァキア語では歌わないのですか?

M:スロヴァキア語で歌うのはCongress of the Pigeonsの時から避けてきたのですが、実はこのアルバムで初めてスロヴァキア語での歌にも挑戦してるんです。四曲目「 Bye Till Summer 」で、アダムがスロヴァキア語でぼくたち三人が夏以外は離ればなれになってしまうことの切なさと、友情について歌っています。
スロヴァキア語を避けてきた理由は”( 歌うなら )英語が主流だ!!”みたいな考えがぼくたちの中にあったからで、今考えると視野が狭い考え方だなと思います笑

-「 I'm the One 」MVについてお訊きします。ドラギーでデカダンな映像はマシュウさん自ら監督していますが、ビデオのアイディアの起点などあれば教えてください。

M:ドラギーとはとても的を射ている表現だと思います笑 このMVはグラスゴーのぼくの住んでいる寮で撮影しました。グラスゴーはそれこそとてもドラギーな空気感があって、ぼくはそういった街の、刑務所みたいな作りの学生寮に住んでいたので、その経験がビデオに反映されたのだと思います。
「 I'm the One 」は別れ話の歌なので、映像もカップルの別れがテーマになっています。彼女にフラれて自殺を考える少年が、自殺一歩手前で友だちに電話をかけると「 チェダーチーズを食べてハイになれば落ち着くよ 」と言われ、チェダー・チーズ・ディーラーから買おうとするも、ディーラーにツケがたまりすぎていたため、性器を切断され川に捨てられてしまう。痛みでもがき苦しんでるなかチェダー・チーズを食べてハイになってトリップし、結局彼女にふられた理由がチェダーチェーズの食べ過ぎと電話で友だちに最後に伝えられる…みたいな、ほんと訳の分からないストーリーですが、ナンセンスなユーモア、ニヒリズム的な笑いを表現しようとしています。
制作にあたってはビデオはインパクトがあるものでないと人はなかなか観てくれないし、つまらないと感じてしまうだろう、と考え、ぼくたちの頭の中にあるアイデア全部流し込み、勢いで作りました。

-Itsa Shokoshokの曲や映像ではしばしばチェダーチーズがモチーフになっていますが、Cheddar Cheeseという単語はくしくもčukučukuと頭韻を踏んでいます。そのふたつのことばに、なにかしらの結びつきを見いだすことはできますか?

M:チェダーチーズは、バンド内のインサイド・ジョークで、バンドメンバーそれぞれで違う意味で使っていると思います。これも説明はできなくて、čukučukuとおなじく、感じてもらうしかありません笑
チェダーチーズというフレーズを使いはじめたのは、アダムとティミーと一緒にPohodaという音楽フェスに行ったとき、フェスティバル用の公共シャワー室で、サラダオイルを塗りまくった裸のおっさんたちが、油を洗い流すシャンプーを勝ち取るために輪になってチェダーチーズを争奪する、というゲームを妄想したのがきっかけです。もちろんそのゲームは実現にはいたりませんでしたが、それからチェダーチーズということばが一人歩きして、ぼくたちの間でなにか神秘的なものに昇華されていきました。

-ご自身が監督した過去の映像も一貫してサイケデリックなカラーマネジメントをされていますが、それは何かに影響を受けたものですか?それとも音楽に合わせた映像を作る、ということを考えた結果そうなっているのですか?

M:映像のカラーマネジメントはPierce Mcgarryという映像作家から受けた影響です。あと、普通のかっこいいクリーンな映像よりは、ばかばかしい、Lo-fi感がある映像の方がぼくたちの音楽性に合うだろうとバンドメンバー話し合った結果でもあります。

バンドの未来について

-今後日本で活動される予定や意向はお持ちですか?

M:日本で演奏する事はぼくたちの夢であり目標です。ぼくのもうひとつのホームでもあるし、そこでバンドとして得られる経験にとても興味があります。ただ、やはりぼくたちのバンドの性質を考え、長い目で見ると今はレコーディングに集中して、ぼくたちの音楽を成長させ、その後オーディエンスにも認めてもらえたら、ツアーなどを開始していきます。その際には必ず日本でのツアーも実現させる予定です。

-ご自身でバンドは発展途上にある、とお考えのようですが、将来的にはどのような存在のバンドになるのが理想ですか?

M:Beatlesみたいなバンドになる夢を思春期のころから描いてきました。でもそれがぼくたちのスタンスと合うのかは分かりません。もしかしたら、裸のラリーズの海外での認知のされかたが、ぼくたちの理想的なバンド像かもしれません。でも何が、どうすれば理想的かなんて考える事はあんまりなくて、音楽をつくる喜びを味わいながら、čukučukuと共にぼくたちの愛を世界に広げていきたいです。もしそれが十年後にもできているならそれがぼくの一番的確な理想的バンド像かもしれません。

おまけ

-音楽以外で好きなものがあれば教えてください。

M:マンガが大好きです!!もちろん映画も写真も洋服も大好きですが、一番の趣味はマンガかもしれません!海外にいるとなかなか日本語で読める機会がないのですが、日本に滞在してる間はたくさんのマンガを一気に読みあさります。バガボンド、ジョジョの奇妙な冒険、アキラ、ドラえもんなどが好きです笑その次に好きなのは映像をつくる事。その次がファッションでしょうか。

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