Donna Blueのフレンチ・ポップ・ノスタルジーな「Sunset Blvd」MV

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オランダのインディー・ポップ・ユニットDonna Blueが自身のYouTubeチャンネルにて「 Sunset Blvd 」ミュージックビデオを公開していました。

Donna Blueは、ソロでも活動しているミュージシャンBart van Dalenと、フォトグラファーとしても活動しているDanique van Kesterenによる、自称"DIYヴィンテージ・ポップ・デュオ"。DIY、と自ら謳っているだけあって、今回のビデオも彼ら二人で撮影、監督そのほかすべてを担当しているそうです。

そんな彼らの作った今回のビデオ、出演するDaniqueさんのヴィジュアルにおけるアンナ・カリーナ感もさることながら、映像を流し見ているだけで「 女は女である 」「 Vivre sa vie 」「 気狂いピエロ 」etc.名作の名前が次々に浮かんでくるような、あからさまなゴダール・リスペクトにニヤニヤしてしまいますね。そして音楽自体はどこかセルジュ・ゲンズブールっぽい。タイトルはビリー・ワイルダー監督の名画から採られているのに。こんなものを見せられたらオリジナルな渋谷系ラヴァーが咽び泣かないわけがないMVだと思います。

突然の引用礼賛

いまはParek & Singhのミュージックビデオをはじめとして、これから作られるべき映像作品の元ネタとなりうる作家の最右翼を担っているのは断然ウェス・アンダーソンですが、皆さんご存知のように、かつてその対象がゴダールだった時代もありました。このMVは、当時( ゴダール≒現代のウェス・アンダーソン時代 )よりも個人で技術的に高度な映像を撮影することが可能となった現代において敢えて前時代の表現の象徴とも言うべきゴダールを再び模倣しオマージュを捧げることで、ゴダール現役フル回転の時代( 60〜70年代 )、そしてゴダールが映像作家たちのヒーローだった時代( 〜90年代 )のそのどちらにも敬意を表しているような、ある種複雑なレトロスペクティヴを形成している感覚を受け手に与えてくれますね。

一方で、こういう所謂"大ネタ"を使うと、すでに知っている人たちやネタ元を愛している人たちに向けたユーモアや「 我々はあなたと同じものを愛している 」というメッセージとしてのみ機能し、不特定多数の所属する閉じられたコミュニティに対してしか訴求しないコンテンツとして捉えられてしまう危険性も孕んでいます。とはいえ、美大生の大半がゴダールを観たことがないという現代において、シンプルにグラフィック的面白さがあるゴダール作品をモチーフにすることは、ゴダールを知らない美的意識の高い人々( 信じられないけど存在するらしい )にも十分魅力的に映り得るのではないでしょうか。

というわけで作品にネタがあるすなわちパクリ、と安易に批判したくなる気持ちもわかりますが、ネタが明確にある( しかも大ネタ )、ということは、上記のような理由で、むしろ知ってる人にも、( 同志になりうる )知らない人にも訴えかけることができると思います。批判するよりは「 よくやってくれた 」とシンプルにサムアップしたいものです。

そんなこと、カルチャー好きにとってはもはや当たり前の価値観で、あえて言うほどのことではないかもしれないけれど、いまだ気づかないでいる誰かがその( 多くの人にとってもはや言及されるべきでない常識的な )価値観を初めてここで知る、という可能性を奪い去らないために突然言ってみました。なにかをすばらしいと思える理由はたくさんあったほうが人生は楽しいですからね。

そんなわけで、この「 Sunset Blvd 」のビデオは素晴らしい。素晴らしいというために時間がかかる( 時間をかけただけですけど )ところも含めて素晴らしいと思います。

ふたたびDonna Blue

今回の「 Sunset Blvd 」はご覧の通り60年代レトロを標榜したものとのことですが、彼らの1stシングルは50年代をイメージしているそうです。以下よりチェックしてみてください。

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