「BRUTUS」「POPEYE」「&Premium」の東京特集を読み比べてみた

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2ヶ月ほど前に発売された&Premiumに続き、同じくマガジンハウスから発行されている「 POPEYE 」と「 BRUTUS 」でも東京ガイド特集号が発売されていました。

BRUTUS ( ブルータス ) 2014年 4/15号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-04-01 )
POPEYE ( ポパイ ) 2014年 05月号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-04-10 )
& Premium ( アンド プレミアム ) 2014年 04月号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-02-20 )

そこで今回は、それぞれの雑誌が「 東京 」というテーマでどのように特集しているのか、比較してみたいと思います。

参考リンク:東京に住む人も「 &Premium 」の東京ガイドを持って街へ繰り出そう。 - simonsaxon

レビュー①:"オシャレ"の基準を提供するBRUTUS。

ブルータス全体リード文。

まずは日本のカルチャー誌をリードする存在、といっても過言ではないであろうブルータス。ブログでは初めて紹介するので軽く読者層を推測してみると、ターゲットは20代後半〜30代全般と結構広め。特にカルチャー的感度の高く、かつ流行に敏感で、新しいものが大好きな人々に対して向けられているような感じですね。

今回は「 101 things to do in Tokyo 」と題し、東京で楽しめることを網羅的に紹介しています。タイトルは日本語に訳すと「 東京でやるべき101のこと 」とでも言うところでしょうか。数の大きさを前面に出して魅力をアピールする、というのは雑誌の常套句とも言える構成です。そのことからも、ここで紹介するものはこれからの東京のスタンダードになるべきものだ、というようなメッセージを発しているように捉えることができるかと思います。

具体的な内容に目を移すと、上の画像に載せたリード文を読んでもわかるとおり、とにかく「 東京の今 」に絞った印象を受けます。紹介されているお店やプレイスポット、サービスなどもその大半がこの4月にオープンするところや、少なくともこの数ヶ月の間にオープンしたばかり、というような場所が大半を占めています。かと思えば、たとえば目黒の「 とんき 」のように、新しいものが生まれているなかでも決して色褪せない、と編集部が考えている定番などもところどころに散りばめられていて、より一層の網羅感を醸し出しています。
そしてどのスポットも、情報提供を主にしつつ( この店に行ったらこのメニューを食べるべき、だとか、この有名人が訪れた、とか )、多分に挑発的なニュアンスをくわえたレコメンド文が添えられています。つまりはガイドブックの王道を行く紹介の仕方、ということですね。あえて視点を固定することによって、読者の気になった店やスポットに対する感情をアジテートするやり方。

しかしそれはガイドブックの体裁を十分に保つためだけのテクニック的なもの、ということだけでなく、やはり「 我々が言うのだからこれからはこれが東京のスタンダードになる。文句は言わせない! 」というような、メジャー誌らしいアティテュードを示すために最も有効なやり方なのだと考えたからでしょう。むしろ今発行されている雑誌でこういうことをやって様になるのはブルータスくらい、というような強気な態度はさすがだなあ、という感じがしました。

東京だからこそ成立する、という感じのバブリーなピンクラタクシー。

101紹介されている中で僕が一番好きなものは、上のピンクのクラウンタクシーの話。直感的にすごく東京っぽい、というかブルータスの考える東京っぽくて思わず唸ってしまいました。

レビュー②:"シティボーイ"を定義し続けるPOPEYE。

東京シティボーイ辞典リード。

お次はこれまた超メジャー雑誌のPOPEYE。今さら僕がどうこう言うほどもないくらい、日本の様々なカルチャーを作り出してきたオバケ雑誌ですね。数年前までは純度の高いファッション誌的な特集の組み方をしていましたが、2012年のリニューアル以降、「 Magazine for City Boys 」をテーマに、服飾にとらわれないカルチャー雑誌として変貌( というより復活? )を遂げました。そして編集部の考える普遍的なシティボーイ像とそれに沿うような最新のカルチャーを、ターゲットである20代前半の文化度の高い男性に対して提供しています。

そんなPOPEYEは、編集部の考えるシティボーイのための東京のあれこれを「 東京シティボーイ辞典 」「 TOKYO EAT-UP GUIDE 」「 23区の1、2、3 」という3つのコーナーで紹介しています。後ろ二つはガッツリ系グルメガイドと、各区にゆかりの深いクリエイターやミュージシャンにおすすめのお店を3つ紹介してもらうかたちでのスポットガイドになっていますが、やはりPOPEYEらしいのは特集の頭のほうに置かれている「 東京シティボーイ辞典 」でしょう。

リード文をみる限りずいぶんとプライドの高い、ともすれば言い訳がましくもとられそうなモチベーションでこの辞典のような特集を組んだような感じがしますけれど、これは最近のPOPEYEの常套句的なものですね。何より2年前のリニューアル号も特集は「 シティボーイのABC 」という辞典のかたちでの構成だったし、一年ごとにトレンドを組み込みながらアップデートして繰り返されているほど大事にされています。

実際辞典方式で紹介されているものは、最新のお店にローカルに根ざしたマニアックな店、あるいは店にとどまらずスタイル的な提案など、カテゴライズするには難しいものが隣り合って並んでいます。それは( リード文のおかげで敢えてやっている、というナルシシズムみたいなものがにじみ出てしまっていますが )読者にとって意図しない順序で情報が入り込んできて、幾分エキサイティングな体験ができるのですごくいいなあ、と感じました。さらに今アメリカを中心に話題になっているダンスミュージックである「 ジューク/フットワーク 」を紹介・説明しているところなどもユースカルチャーに厚いPOPEYEらしいところの一つだと思います。

もう一つ付け加えると、POPEYEの各記事に添えられている文章はどれも情報提供というよりも読ませることを目的にした文体で書かれていて、それが読者の感情をアジテートするかたちにもなっていますね。

思わず笑ったクロエ・グレース・モレッツのイラスト。

好きだった箇所は「 お忍び 」という項目で、海外セレブが来日の際に訪れたスポットを紹介する記事に寄せられていたクロエ・グレース・モレッツのイラスト。キックアスの衣装でつるとんたん食べてるわけないので思わず笑ってしまいました。

レビュー③:よりローカルな東京をガイドする&Premium。

最後は以前紹介した&Premium。詳細はぜひ過去エントリーをご覧ください。

東京に住む人も「 &Premium 」の東京ガイドを持って街へ繰り出そう。 - simonsaxon

ここでも少しだけまとめるとすると「 A better life 」を標榜する20代後半〜30代前半の、主に女性に向けた雑誌。4月号の特集「 新・東京観光ガイド 」では、他県からの観光客だけでなく、ほとんど東京に住んでいるひとに向けられている、と言っても過言ではないようなスポットをメインに紹介していました。

それぞれに共通するもの。

ざっと各雑誌の特徴や印象を、構成や文体などを独善的に分析し書いてみましたが、これら雑誌に共通して言えることは、どの雑誌も海外に目を向けて制作していることだと思います。とにかくどの雑誌も、かたちはどうあれ外国人の意見を必ず組み込んでいる。例えばブルータスなら道行く外国人観光客のおすすめをインタビューしていたり、POPEYEでは世界のガイドブックを紹介する記事で世界からみた東京を浮き彫りにしたり、&Premiumでは外国人クリエイターによる東京案内のページがあったりするのです。これはもはやマガジンハウスという出版社全体に根付いている「 異文化( 特に欧米の文化 )を紹介する 」という編集方針なのかもしれないし、国家ベースで外国人観光客を増やすプロジェクトをしている状況にあやかろうとしているのかもしれませんが、単純に、他県とは違う東京の最もわかりやすい特徴のひとつである「 東京には外国人が多い 」ということが無意識的に表れているように感じました。文章としてはどこにも書かれていないし書くほどのことでもないでしょうけれど。

あとブルータスとPOPEYEについては、あまりにメジャーで影響力の高い雑誌であるためか「 我々が文化を作っていくんだ 」という意識がすごく強くて、なんだか辟易してしまうところもありました。「 ここを知らないと流行に乗り遅れている 」とか「 ここを知らないなんてオシャレじゃないね 」とか言われてしまうような強迫観念にとらわれる感覚。
たしかにこれらの雑誌はひとつの文化的基準を作り上げる役割を120%果たしているとは思いますが、それがトップに君臨する雑誌のスタンスとしてはいいのかな、なんてことを考えてしまいますね。もう少し押しつけがましくない紹介の仕方をしたらいいのになあ。
その点、&Premiumは肩の力が抜けていていい感じですね。東京特集に関しては一番好きです。

最後に。

というわけで、長々と書いてしまいましたが、それぞれの雑誌の特徴がおわかりいただけたでしょうか。言葉にするなら、ブルータスとPOPEYEは膨大な東京情報を通して各編集部のスタンスをみせる、オシャレとは何かを問いかけつつ答える雑誌で、&Premiumは情報量は他の二誌に比べて少ないけれど、東京のあまり知られていないが魅力的なスポットをオシャレに紹介する雑誌、と言った感じです。みなさんもぜひ読み比べてみてはいかがでしょう。

関連リンク

『一世一代の旅、その先の絶景へ』 ( No. 776 ) ブルータス ( BRUTUS ) マガジンワールド

BRUTUS ( ブルータス ) 2014年 5/1号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-04-15 )

『東京特集』 ( No. 805 ) ポパイ ( POPEYE ) マガジンワールド

POPEYE ( ポパイ ) 2014年 04月号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-03-10 )

『つくりのいいもの』 ( No. 5 ) アンド プレミアム ( &Premium ) マガジンワールド

& Premium ( アンド プレミアム ) 2014年 05月号 [雑誌]
マガジンハウス ( 2014-03-20 )
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