カズオ・イシグロの名作「わたしを離さないで」が今度はテレビドラマに綾瀬はるか主演で1月よりTBSで放送スタート

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今年の3月に新作小説「 忘れられた巨人 」を発表したイギリスの小説家、カズオ・イシグロ。そんな彼の大ヒット小説「 わたしを離さないで 」は、これまでキャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイをキャストに迎えて映画化され、日本では多部未華子主演、蜷川幸雄演出の舞台が上演されてきました。そして今回はあらたなメディアミックスとして、来年1月より金曜10:00〜の枠で、テレビドラマとして放映されることになったそうです。

テレビドラマは舞台をイギリスから現代の日本に変えるという大胆な脚色がなされています。原作ではキャシー・Hにあたる保科恭子役には綾瀬はるか、トミーこと友彦役に三浦春馬、ルースこと美和役には水川あさみが起用されるとのことです。

公式サイトに書かれているあらすじは以下のとおり。

手術台の男性を見つめる女性・保科恭子( 綾瀬はるか )。その表情は、感情が抜け落ち、全てを諦めているかの様に見える。彼女にはとある使命があった。その使命とは…

20年前、山の中にある陽光学苑で生活していた恭子( 子ども時代・鈴木梨央 )。この学苑では子どもたちが寄宿舎で生活を共にし、教育を受けていた。ある時、恭子は同級生の土井友彦( 子ども時代・中川翼/大人時代・三浦春馬 )が男子たちからからかわれ、かんしゃくを起こしているところを見つける。女子のリーダー・酒井美和( 子ども時代・瑞城さくら/大人時代・水川あさみ )には「 放っておけば? 」と言われるが思わず駆け寄る恭子。友彦のかんしゃくは治まらず、恭子を突き飛ばして女子たちの顰蹙をかってしまう。

ある日、学苑に新しい教師・堀江龍子( 伊藤歩 )が赴任してくる。校長の神川恵美子( 麻生祐未 )の教育理念に魅かれて志望したという龍子だったが、子どもたちの教育を目の当たりにして何か違和感を覚える。

そんな時、恭子たちは神川校長から“大事なこと”を教えられる。

「 あなたたちは生まれながらにして『使命』を持っているのです 」―。

引用元:金曜ドラマ『わたしを離さないで』 | TBSテレビ

特筆すべきは、テレビドラマ化に際して原作者のカズオ・イシグロ本人からコメントが寄せられていることでしょう。そしてそのコメントもまた上品かつ抑制が利いていてとても素晴らしい。以下にもうおもいきって全部引用します。

■「 わたしを離さないで 」が日本で連続ドラマになることに対しての感想をお聞かせください。

この物語が私の生まれた国で、新しくより広い範囲の視聴者に楽しんでいただけるということで深い満足感を覚えます。原作の背景は現代イギリスの悲観的な別世界を想定していますが、この物語を書いているときに私の作品の中でも最も「 日本的 」な話だとよく感じていました。この物語で描かれている暗い社会が他の国より日本に近いと言っているわけではありませんが!中心人物たちの願望や葛藤、悲しい運命に対する彼らの態度や人間のありように対する全体的なビジョンは、私がイギリスで育ったときに吸収した日本の映画や書籍の影響を多く受けていると思います。従って、この物語が妙にゆがんだ日本的な背景を持って演じられることとなったことに私がどれだけ夢中になり興奮しているかがお分かりいただけるかと思います。
「 Never Let Me Go 」は立派な映画となって公開されましたし、( 偉大なる蜷川幸雄さん演出の )素晴らしい舞台作品にもなりました。しかし、連続となるテレビドラマはまったく別のものであり、ドラマという形式がどのような新しい要素を原作から引き出してくれるのか大変興味があります。

■ドラマの脚本を読んでの感想をお聞かせください。

このTBSのドラマは、物語の中でこれまで光の当たっていなかった部分、奇妙で興味をそそるような角やくぼみ、時々はこれまで気づいていたけれども開けたことのなかったドアを開けて新しい部屋をまるまる見つけるような、原作の新しい部分を発見して、光を当ててくれると自信を持って言えます。森下佳子さんはTVという形式における素晴らしく有能な脚本家であり、原作では提起されたけれども完全には答えがでなかった問題を深く探ってドラマ化しています。
彼女の脚本を読むことは楽しみであると同時に、勉強になりました。

■日本の視聴者に対してのメッセージをお願いいたします。

この物語にあなたの心が動かされ、感動してくれることを願います。結局は、物語を作り、世に出すことで私は一番人を感動させたいのです。私はお互いに自分たちの気持を伝え合うことの手伝いをしたいのです。私はこう言いたいのです…私は生きるとはこういうものだと思います、あなたは同じように感じていますか?こういう気持ちをあなたも分かってくれますか?

引用元:金曜ドラマ『わたしを離さないで』 | TBSテレビ

映画や舞台、そしてテレビドラマと、これまで発表された「 わたしを離さないで 」に関わる人々みんなに敬意を払っている印象を受けますね。たとえば原作のファンにとって、こういったメディアを変えて作られた作品に対する評価は原作という基準があるためにどうしても低くならざるを得ないのですが、作者はそのすべてにリスペクトを欠かしていないのだと考えると、視点を固定してしまって新たなものを受け入れづらくなってしまっていた自分の浅はかさに気づいて何とも言えない気分になってしまいますね。
ともあれ、さらに注目すべき点といえばイシグロ自身「 わたしを〜 」を「 わたしの作品のなかで最も日本的なものである 」と考えているところ、でしょうか。これはあまりほかでは言及されていないところですので一種のリップサービスである可能性も否定できませんが、それ故に舞台にもドラマにもなっているし、日本の読者に響きやすい作品になっているのかもしれないな、なんて思います。

脚本は「 天皇の料理人 」や朝ドラ「 ごちそうさん 」を担当した森下佳子さんが手がけるとのことで、少なくともビジネス的にはある程度の成果が約束されているドラマだとは思いますが、上にある原作者の感情のこもったコメント群に胸を高まらせつつ放映される来年を楽しみにしましょう。

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