ウディ・アレン「ブルージャスミン」レビュー

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先日、閉館間際の吉祥寺バウスシアターにてウディ・アレンの最新日本公開作ブルージャスミンを観てきました。

作品データ&あらすじ

公式サイトに載っていた作品のストーリーはこちら。

 サンフランシスコの空港に美しくエレガントな女性が降り立った。彼女は、かつてニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われたジャスミン( ケイト・ブランシェット )。しかし、今や裕福でハンサムな実業家のハル( アレック・ボールドウィン )との結婚生活も資産もすべて失い、自尊心だけがその身を保たせていた。
 庶民的なシングルマザーである妹ジンジャー( サリー・ホーキンス )の質素なアパートに身を寄せたジャスミンは、華やかな表舞台への返り咲きを図るものの、過去の栄華を忘れられず、不慣れな仕事と勉強に疲れ果て、精神のバランスを崩してしまう。
 やがて何もかもに行き詰まった時、理想的なエリート外交官の独身男性ドワイト( ピーター・サースガード )とめぐり会ったジャスミンは、彼こそが再び上流階級にすくい上げてくれる存在だと思い込む。
 名曲「 ブルームーン 」のメロディに乗せて描かれる、あまりにも残酷で切ない、ジャスミンの運命とは───。

引用元:イントロダクション&ストーリー - 映画『ブルージャスミン』公式サイト

主人公の落ちぶれたセレブ美女ジャスミンを演じるのはハリウッドのスーパースターの一人であるケイト・ブランシェット。この作品で昨年度のアカデミー主演女優賞を獲得しています。作品自体も昨年のアカデミーで脚本賞にノミネートされているなど、ある程度の面白さはすでに保証されている映画ですね。

2010年代に入ってからはロンドン、パリ、ローマなど主にヨーロッパの街を舞台に映画を作ってきたウディ・アレンですが、今回はアメリカ国内にカムバック。ニューヨークの財界セレブだった女性が夫との離婚を機に故郷のサン・フランシスコに戻り、安アパートに暮らす妹・ジンジャーを頼って再起を図る姿を描いています。

感想

ウディ・アレンといえば超多作の映画監督で、69年の監督デビュー以来今までに50本以上の作品を生み出していますが、そのほとんどがいくつかの共通したモチーフの組み合わせで作られていますね。例えば結婚あるいは恋愛関係にある男女の不貞や裏切り、そして別れなんかはどの作品にも必ず出てきます。それをベースに、スランプの脚本家だったり、スノッブなブルジョワジーだったり、その対比として出てくる文化的素養の低いワーキングクラスだったり、あるいは精神科医だったり、ユダヤ教信者だったりが登場していざこざを起こす、というのがウディ・アレン作品の特徴かと思います。むしろ今あげた要素がすべて入ってる映画がすでにもう作られていそうな気がするくらい、彼の作品は似通ったモチーフが多いですね。だからこそこんな多作なのかな、なんて考えてしまいますが。

ともあれ、今回のブルージャスミンは今挙げた中だとスノッブなブルジョワジー的生活に固執する美女と、貧しいながらにも現状に満足している文化的素養の低い女性、という対比がメインに置いているような気がしました。

しかし対比しているにもかかわらず、さらに結局は現状に満足している女性が、一波乱ありつつもなんだかんだで幸せになってしまうにもかかわらず、どちらの女性も全然魅力的に描かれていないところがこの映画のすごいところだと思います。
この「 ブルージャスミン 」のような映画、豊かな生活から離れているものの、それに固執し再起を図る人物を主人公とする映画は、たいていの場合ちゃんと再起できてハッピーエンドか、あるいは今まで固執していた豊かな生活なんて実は取るに足らないことだったんだと気づかされ、何もない状況からもっと大切なものを見つけて生きていこう、というような結末を迎えるものだと思うのですが、この映画は違うのです。ブルジョワジーな生活を再び手に入れようとする主人公はブルジョワジーの生活を夢見て精神がボロボロになって終わり、対比であるワーキングクラスの妹は、紆余曲折を経て登場時と何も変わらずに終わってしまいます。

これを、この世の残酷さ、人生の上手くいかなさを描いている、と断じるのは容易いですけれど、私は映画とは常に誰かの人生を肯定してくれるもの、少なくとも観客に希望を与えてくれるものであってほしいと願っているので、このブルージャスミンの主人公にも、上に書いたようなとってつけたようなポジティブエンディングとはまた別の幸せな結末を迎えてほしかった、と考えてしまいました。

最後に。

というわけで、なんとなく散らかった感想になってしまいましたが、ストーリーは残酷とはいえ基本的にはコメディなので、ところどころ笑える部分があって、とても楽しめる映画でした。一緒に観に行ったおしゃれな女の子は「 お金ない、とか言いながらフレンチメゾンの高い服で全身固めているのめっちゃおもしろかった! 」なんてことを言っていたので、セレブリティ文化に詳しい人はもっと楽しめるのかもしれません。バウスは五月末で閉館してしまうのでみなさんお早めに、あるいはほかの映画館でどうぞ。

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