大橋裕之「ザ・サッカー」レビュー。未解決の笑いであふれているよ

投稿日:04/06/2014 更新日:

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ザ・サッカー表紙。

大橋裕之さんの新しい単行本「ザ・サッカー」を読みました。

ザ・サッカー
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大橋裕之さんについて。

1980年生まれの愛知県蒲郡市出身の大橋裕之さんは、2005年に「謎漫画作品集」や「週刊オオハシ」などの自費出版マンガで漫画家としての活動を開始、現在「モーニング・ツー」や雑誌「EYESCREAM.JP」「FINEBOYS」「CDJournal」などなど、数多くの媒体で連載を持っています。さらに今年の2月には、昨年まで「モーニング・ツー」で連載していた「シティライツ」のなかの一編が、NHK・Eテレの「青山ワンセグ開発」にて前野朋也さん監督、橋本愛さん主演でミニドラマ化されたり、自身の参加する舞台イベント「共感百景」が、ゴッドタンでおなじみ佐久間宣之さんのプロデュースで地上波で放送されたり、かと思えば昨年行われていたインディー音楽イベント「月刊ウォンブ!」のフライヤーやチラシに連載していたり、そのほか岡村靖幸さんなどのグッズを手がけたり、現在店舗リニューアル休止中の吉祥寺にある古本屋「BASARA BOOKS」のチラシを作ったりと、あらゆる方面で大活躍しています。そういえば謎のポップバンド「Les anarchos」でドラムを担当し、レコードデビューなんかもしていますね。

話はだいぶ逸れましたが、漫画家としての活動では、かつて自費出版されたものが太田出版より再発された「音楽と漫画」や、前述した「シティライツ」、自身のちょっと変わった体験、漫画家になるまでの紆余曲折した日々を綴った「遠浅の部屋」などが商業作品として出版されています。

大橋裕之さんが描くメッシ。笑いました。

そして今回紹介する「ザ・サッカー」は、かつて「フットボールサミット」というサッカー雑誌で連載されていた、サッカー選手や監督を主人公にしたマンガが7編と、「GIANT KILLING」のムック本に掲載されたサッカーがテーマのマンガ二編、Webサイト「サイゾーPremium」で連載されたオリンピック選手を主人公にしたマンガ5編のほか、東京オリンピックがテーマの「東京」と、海で溺れかけた自身の体験をマンガにした「スポーツと私」の2本が書下ろしで収録されています。

内容は基本的にギャグマンガ、ということでいいと思います。実に大橋裕之さんっぽい、元となったスポーツ選手の実際のパーソナリティを一切無視して作られたマンガはどれも素晴らしいです。こういう実在の人物が主人公のマンガは、出てくる人を知らないとつまらなかったりするのですが、この作品では本田や香川、あるいは室伏やメッシなど、超有名選手ばかり扱っているので万人が楽しめること請け合いです。たぶんあまり知られてないのってポポビッチくらいじゃないでしょうか。

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大橋裕之さんの作品の魅力とは。

独特なオノマトペも魅力の一つ。

ところで、大橋裕之さんのマンガのおもしろさを言葉で伝えるのはとても難しく、だからこそ上に書いた感想もさらっと書いてしまったんですが、誰かに勧めるときも「ゆるくていい感じだからとにかく読んでみて!」と言うことが多いし、大橋ファンの人と話しても結局「なんかいいよね」みたいなところから抜け出せないままでいることが多いです。実際読んでみて体感してもらうのが一番わかりやすい。
ほかの人のレビューや出版社による宣伝コピーなどを読んでみると、シュールな世界観とか、人生の悲哀と笑い、とか、そういう言葉で表現されている場合が多いですが、大橋裕之さんの作品はそう言うものをすべてひっくるめて「未解決」であることが最大の魅力なのではないかと思います。

未解決、というのはもちろん答えが出ないということですね。マンガにおいて答えがあるということは、作品内で表現された要素のすべてに原因と結果が対応している状態だといえます。たとえばONE×PIECEなんかはまさに原因と結果の物語ですね。麦わらの一味が上陸する島々で起こる事件を過去に遡りつまびらかにしながら、悪はこういう理由で悪だから、善によって解決しなければならない、という風に読者にちゃんと説明している。ワンピースみたいな作品のように、人間は、少なくとも社会生活をしっかりと生きているある程度年齢を重ねた人なら、物事に原因と結果が与えられるとすっきりするものです。

しかし大橋裕之さんのマンガにはそのような原因と結果がほとんど存在しない。物語の最初の部分で提示されたものが、しっかりと理論づけられたかたちで終わりを迎えない。くわえて、物語の途中で急に現れたUFOなどに話を存分に狂わされたまま終結する、なんてことも多々あります。UFOが現れた理由も、何なら最初に提示されたものにすら、なんとなく違和感があるにもかかわらずすっきりとした解答、少なくとも読者個々の脳内に納得できる答えを見つけ出すことができない。完全に説明不足で淡々と進む話は突然終わり軽い驚きとともに、読者に余韻を残すのです。とはいえ別に疑問だらけで物語が進んでいくため混乱するわけではなく、話の運びかたにどこか運命的なものを感じるので、未解決がベースにありながらもぐんぐんと読み進められる。そういった点はまさにおとぎ話のような感覚ですね。もしかすると、モノローグやナレーションを多用したり、あるいは非アカデミックでしかない独特な絵柄だったりすることが起因しているのかもしれません。

最後に。

というわけで、なんとなく説明くさくなってしまいましたが、大橋裕之さんのマンガの魅力が伝わっていれば幸いです。そして今回紹介した「ザ・サッカー」だけでなく、ほかの作品もめちゃくちゃおもしろいのでぜひ読んでみてください。

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