原節子「手帖抄」(「新潮」2017年1月号掲載)を読んで考えたこと

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原節子によるまぼろしのエッセイを掲載してくれたおかげで、文芸誌の新潮を買うにいたりました。雑誌創刊113年目にしてはじめてのことです。

表紙の英語はボブ・ディランの曲名タイトルから。

掲載されている原節子「手帖抄」は過去(第二次世界大戦が終わってすぐの時代)に、彼女の義兄の頼みで地方の文芸誌に一度だけ載ったことある文章で、最近になってその存在が見つかったものだという。まぼろし、と呼ばれているのはそのあたりがゆえんである。

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内容はといえば、彼女が普段の生活の中、たとえば電車で見かけた風景や時事的な話から、敗戦直後の日本人が日々生きるためにふさわしい在りかたを考える、というまるで新聞の読者欄のような手記だった。そういえばタイトルの手帖抄も、そこなく読者欄っぽいおもむきがある。

読んで最初に頭に浮かんだのは「原節子ってめっちゃ電車乗ってるな」という至極シンプルで深みのない感想だったが、ともかく彼女の手によって語られるエピソードはありふれたものばかりで、それゆえに生々しく、女優としてではない原節子のすがたを垣間見ることができるものになっていると思う。

エッセイのあとのページには、国文学者の石川巧、評伝「原節子の真実」著者である石井妙子両氏がそれぞれ解説文を寄せていた。それらの文章において手記が書かれた経緯の事実関係はどちらも概ね合致しているのに、書かれている内容(特に本文から読み解く主題について)は驚くほど対照的だったのには驚いた。やはり原節子ほどの存在になると、書き手によって「わたしの考える原節子」、原節子に投影するこうあってほしいという理想の姿に対する振れ幅も大きく、ヴァリエーションも豊かになるのだなあ、としみじみと感じた。

ちなみにわたしは石井妙子さんの読みのほうが好きです。わかりやすく原節子への愛情にあふれているので。

商品情報

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