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「喫茶 ふしぎ探訪」レビュー。情報の羅列では描けない喫茶店の魅力を表現したzine

2016/06/03

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「喫茶ふしぎ探訪」表紙。

今年の3月に発行されてなにかと話題のzine「喫茶ふしぎ探訪」を読みました。

インデックスに記載されているクレジットによると、企画・テキストはまついみなみさん、イラストはコグレチエコさん、アートディレクション、デザインはABLE & BAKERしまわきさとしさんが担当しているようです。造本がコルシカさんの「学習まんが アフォーダンス」にとても似ていますが、同じ印刷所に発注したのでしょうか。

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内容について。

肝心の内容はというと、表紙をふくめて全24ページのなかに、東京の喫茶店についての短いエッセイが5篇(具体的にいうと吉祥寺の「和風喫茶 プチ」や白山にある「ジャズ喫茶 映画館」、向ケ丘遊園駅が最寄りの「ジャズ喫茶 ガロ」、渋谷の超有名店「名曲喫茶 ライオン」、そしてすでに閉店してしまった吉祥寺の名店「グリーンヒル」を訪れ、体験したことを書いた文章)と、玉ノ井地区近辺にある喫茶店を目指して最寄り駅や周辺を徘徊した道程を示しつつ、そこで訪れた喫茶店以外のお店や見つけたものを紹介する「喫茶のある街 そぞろ歩き」と題された散歩企画ページ、そして蒲田のジャズ喫茶「直立猿人」で体験した、生死にまつわる話を書いたコラムが1篇収められています。

コラムも含めて扱われる喫茶店の多くは、いい音楽がいい音で聴けることを売りにしているお店なので、それが裏テーマかもしれないし、あるいはひとつだけそうではない場所があるからそこに合わせて音楽が聴ける喫茶店、と括るのをやめたのかもしれません。

と、いうのはある程度編集的な目線でみて感じたことですが「とにかく好きな喫茶店を挙げてみたらたまたまそうなった」ということなのだと思いますし、そう考えたほうがこのzineを心から愛せる気がします。

そして、形容するなら「レトロかわいい」といった感じのコグレチエコさんによるイラストもいたるところに散りばめられいて(見開きのイラストページもあります)、これらが誌上で趣のある喫茶店の雰囲気を表現するのに一役買っているのではないでしょうか。

喫茶店を訪れることで体験したえも言われぬ魅力=ふしぎ?

このzine、「ふしぎ探訪」とは題されているのですが、具体的な「ふしぎ」(たとえば「このレトロな喫茶店があまりに場違いな都心部で長年営業できているのはなぜか」みたいな疑問など)を挙げて、それを解明していくというかたちをとっておらず、むしろ「ふしぎ」が見つかった喫茶店をエッセイで紹介したい、という思いで成立しているのではないか。ここでいうふしぎとは「明確に説明できない魅力」と言い換えてもいいかもしれません。時代から置き去りにされた古ぼけた建物、そこにある扉の向こうには「ふしぎ」が広がっていたときの驚き、それに対する少しの(自分の日常とはかけ離れているだれかの日常に対する)違和感、そしてそこに足を踏み入れ空間を共有したうえで体験したことなどをすべて含めて線的に味わい、最後に感じた(体験の感想として残った)「ふしぎ」という感覚を、読者にも体感してほしい--そういった意味合いを込めつつ、ガイドブックに書かれているような、メニューのラインナップの充実ぶりや味、店側が考えるウリなど(そもそもここで紹介されている喫茶店側にお店の考えるウリなんて考えはなさそうだけれど)からは知ることができない、情報の羅列からは読み取れない喫茶店の魅力(しかもそれすら喫茶店の魅力の一側面でしかない)を表現しているのです。

なんていうと少々考えが走りすぎているかもしれないけれど、少なくとも作り手のそういった気概を窺い知る、想像することができます。

最後に。

エッセイ自体も、筆者自身の喫茶店を訪れるという行為自体への愛情を深く感じる文章になっているのがいじらしくも心地よいものでした。言ってしまえばwebサイトでも完結させられるようなものだけど、webサイトならおそらくこのzineの本質を好むような人々には響かずに終わっていたかもしれない。そう考えるとやっぱり手で触れるかたちにすることってすごく大事ですね。

とはいえ、何より表2に現れているリード文などを読むにつけても、初期衝動というか「自分の好きなものをかたちにして見てもらいたい」という情念みたいなものをそのまま具現化しているように感じるのがなによりも素晴らしいことだと思います。なにかと閉じたコンテンツしか目に映らないこのご時世においては特に。

3月発行というのもあり、残念ながらwebストアではすでに完売してしまっているようですが、いくつか店頭(あるいはwebショップ)で買えるお店もあるみたいなので気になる方はぜひオフィシャルHP、あるいは下記引用よりチェックしてみてください。

お取り扱い店
音羽館 (西荻窪)
恵文社一乗寺店 (京都)
古書コンコ堂 (阿佐ヶ谷)
古書ほうろう (千駄木)
SUNNY BOY BOOKS (学芸大学駅)
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS (渋谷)
スタンダードブックストア 心斎橋 (心斎橋)
BASARA BOOKS (吉祥寺)
ハナメガネ商会 (益子)
PEOPLE BOOKSTORE (つくば)
百年 (吉祥寺)
H.A.Bookstore (蔵前)
books moblo (鎌倉)
本とコーヒー tegamisha (柴崎)
本屋 Title (荻窪)
本屋 B&B (下北沢)
STORES.jp (ONLINE SHOP)

引用元:喫茶ふしぎ探訪

関連リンク

喫茶ふしぎ探訪

Chieko Kogure | コグレチエコ

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