フリースタイル26号レビュー。まるで喫茶店で隣席の魅力的な話に聞き耳を立てるような雑誌。

2016/03/18

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ナイアガラがモチーフのフリースタイル26表紙。矢吹申彦さん作。

ひと月ほど前に発売された雑誌「フリースタイル 26」を読みました。

フリースタイル26 特集 マンガにとって「絵」とはなにか
江口 寿史 上條 淳士 舘浦 あざらし 窪木 淳子 宮脇 孝雄 中条 省平 米光 一成 戸川 安宣 盛田 隆二 野崎 歓 大根 仁 栗原 裕一郎 小西 康陽 いしかわ じゅん 吉田 豪 柳下 毅一郎 風間 賢二 森 卓也 矢吹 申彦 とり みき 和泉 晴紀 和田 尚久 宇田 智子 安田 謙一 柴田 幸裕
フリースタイル

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フリースタイルについて。

フリースタイルは2005年に創刊された「ポップ・カルチャー・マガジン(と、公式HPには書いてあります)」。創刊号発売から現在まで約10年の間に、若干の休止期間があったり、判型が大きくなってまた戻ったりと紆余曲折ありつつ、2014年4月現在26号まで発刊されています。

編集長の吉田保氏はフリースタイルのほかに、現在何かと話題の小学館「ビッグコミックスピリッツ」の巻末にあるコラムページ「イン・ハイ・スピリッツ」も担当しているようです。スピリッツのほうもフリースタイルと寄稿者が一緒だったりするので、こちらも読んでみると楽しいですよ。毎週読めるミニフリースタイル。

現在の構成は、まず米光一成さんや大根仁さん、吉田豪さん、鏡明さんなど、あらゆるジャンルの40人以上の書き手が指定された3ヶ月の間に触れた本や映画、ゲーム、音楽などを3つ挙げて感想を述べるカルチャー時評コーナー「one,two,three!」が巻頭にあり、次に特集の対談記事(今号では江口寿史さんと上條淳士さんによる超ハイレベルな絵描き談議)、号によって寄稿者がまちまちな(とはいえ舘浦あざらしさんなど2,3人は固定されていて、過去には若き音楽イベントプランナーの仲原達也さんやジオラマブックス主宰の森敬太さんなども寄稿している)5篇ほどのコラムページ「talk of the town」などが続きます。その他連載として、放送作家・和田尚久さんのエッセイ「夜は夜もすがら」、小西康陽さんがその時々で会いたい人と対談する「お会いしたかったんです。」や、有名作家が文章に残した食事について思いをめぐらす矢吹申彦さんの「文人ごはん」、山田宏一さんが膨大なアーカイブを引用しつつ映画のあれこれを考察する「映画教室」などが掲載されています。とり・みきさんによる1ページコミックも毎号2編ほど載っています。
また、毎年の最終号では「このマンガを読め!」と題しまるごと1冊マンガ特集号を刊行(過去にはムック本として発売されていたものが2011年より本誌で特集号化)。識者によるその年で印象に残ったマンガの投票を行い、ランキングにして発表するほか、総評や票が入ったマンガの表紙全作紹介などを掲載しています。

26号の特集表紙。天才漫画家ふたりによる対談はすごく刺激的でした。

上にあげた各記事で扱われているのは、主に「one,two,three」で挙げたような本や音楽、マンガ、あるいはラジオやテレビ、広告、旅や食など、ポップ・カルチャー・マガジンの名の通り、文化的なものなら何でもあり、といった感じです。

雑誌内容はとりあえずこの辺にして、過去のエントリと同じようにターゲットを独善的に想像してみると、これまでのように年齢で区切るのは少し難しい感じがします。強いて言うなら、以前片岡義男さんや和田誠さんが寄稿していたり、題字を担当しているのが平野甲賀さんだったり、小西さんや山田宏一さんが連載をしていたりと、掲載者のメンツだけみると明らかにワンダーランドや80年代初期までの宝島を強く意識している感じがするので、その辺りのカルチャーに寄り添っていた世代、すなわち今で言うと40代後半〜50代くらいの男性がメインターゲットとなっているのかもしれません。

しかしこの雑誌に関しては、年齢というより、世代を越えて存在するとある趣味嗜好に共感している人をターゲットにしている、と考えたほうがしっくりくるような気がします。つまりは先に挙げたワンダーランド的なもの、と言い切ってしまうには僕はその雑誌についてほとんど何も知らないのですが、少なくともマスに訴えかけるよりはコアに響くカルチャー、インダストリアルというよりインディペンデントなものを嗜好しているすべての人々は、このフリースタイルという雑誌を心から楽しめるような気がするのです。

感想。

前置きが長くなってしまったので今号の感想は手短かに。特集記事の江口寿史さんと上條淳士さんの対談はもちろん大変面白かったのですが、あまりにも自分のいる次元とは違うところで話が進んでいくので、ただただ感嘆するばかり、といった感じでした。おそらく絵を生業としている、またはしていこうと思っている人にとってはずいぶん参考になるのではないでしょうか。とはいえ、彼らが現在気になっているマンガ家、イラストレーターが語られていたのは万人にとって刺激的なトピックだと思います。あとこれは余談ですが、あわせて江口寿史さんと記事にも名前が出てくる中村祐介さんとの対談が載っているイラストレーション6月号も読んでみると、より楽しめるかもしれません。

しかし今号で一番心動かされたのは、山田宏一さんによるone,two,three!のショートコラムでした。映画「ニシノユキヒコの恋と冒険」を引き合いに出しつつ新旧映画の幽霊に関するあれこれを連載の「映画教室」と同様に(しかしショートコラムなので単語レベルで)膨大な引用で紹介したかと思えば、あらぬ方向に着地する、非の打ち所がない素晴らしい文章。800字足らずの中でのその圧倒的展開力に打ちのめされてしまいました。

山田宏一さんのone,two,three。

最後に。

というわけで、かなり長々と書いてしまいましたが、このフリースタイル、文化的なセンスを持ち合わせている人なら年齢や性別を問わず楽しめる数少ない雑誌だと思うのでみなさんにぜひ読んでほしいです。色々な分野のプロの文章がたくさん読める贅沢。とはいえ書いてる内容はライトなので、毎号読むたびまるで現代の文化人が集う喫茶店、あるいは飲み屋で周囲の魅力的な話に聞き耳を立てているかのようなエキサイティングな体験ができますよ。

関連リンク

フリースタイル26 特集 マンガにとって「絵」とはなにか
江口 寿史 上條 淳士 舘浦 あざらし 窪木 淳子 宮脇 孝雄 中条 省平 米光 一成 戸川 安宣 盛田 隆二 野崎 歓 大根 仁 栗原 裕一郎 小西 康陽 いしかわ じゅん 吉田 豪 柳下 毅一郎 風間 賢二 森 卓也 矢吹 申彦 とり みき 和泉 晴紀 和田 尚久 宇田 智子 安田 謙一 柴田 幸裕
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