巖谷國士×龍國峻「驚異の部屋(ヴンダー・カマー)とシュルレアリスム」@下北沢・B&Bの雑然とした感想。

2017/02/01

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下北沢・B&Bで行われた巖谷國士さんと某古書店の店主との対談イベントへ行ってきました。

B&Bの看板。

イベントは「驚異の部屋とシュルレアリスム」と題されていたものの、実際にはそのタイトルを底に置いて行われる新春放談、といった趣で、たとえばことし没後30年だという、生前自身の住む部屋を「驚異の部屋(16〜17世紀ごろヨーロッパの貴族が世界中を旅して自邸に持ち帰った珍しいもの(や高価なもの)を集めた部屋のこと)」めいたものに仕立てあげていた澁澤龍彦の名前を挙げつつ、彼のパブリック・イメージは半分篠山紀信の写真が作ったものだと言ったり、かと思えば20才の巖谷氏に自由に生きることの素晴らしさを教えてくれたのは澁澤龍彦であると宣言したり、あるいは多くの奇形や狂気の人間がノーマルな人と一緒に生活している赤塚不二夫のマンガの世界はまるで中世の日常のようだとか、「シン・ゴジラ」は面白い映画だが決定的に欠けているものが3つある(といいつつひとつしか教えてくれなかった)とか、だけど「君の名は。」は問題外の作品だとか、または温泉の大切さとか、今回もあらゆる分野にわたって非常にエキサイティングな話を聴けた。

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そうなったのはもちろん、ひとえに巖谷氏のもつ知識量の膨大さによるところが大きいが、今回はそれにくわえて幸か不幸か、このためにわざわざ九州から出てきた若き対談相手(わたしの年下だった)が巖谷氏を目の前にして緊張していた&言葉を選ばずに言うならあきらかに準備不足だったことで(前日に打ち合わせしたらしいけど)、会話の流れを無視して自分の話したいことをぶつけていたからかもしれない。おかげで普段の巖谷氏の講演スタイル、列車が進むにつれ風景が変わるがごとくある程度の連続性を持って次々に話題が移ろうスタイルとはまた別の展開が生まれていた気がする。まるで針飛びするレコードみたいにガタゴトと話が行きつ戻りつ進みつするような、と言うとカッコつけすぎでしょうか。
ともあれその針飛びトークの一例には、対談相手の古書店店主がその後の巖谷氏への質問につながる前提として「エログロナンセンス」やにっかつロマンポルノ、若い女性における春画・吉原ブームなどに代表される"エロ"を挙げると、巖谷氏は食い気味に「それは本質的なエロティシズムとはまったく違う」と指摘しつつ、その理由を述べながら徐々にそこから離れていき、ひと段落ついたところで、終わったはず(前提が崩れてしまったはず)の"エロ"の一例である秘宝館の話に立ち戻ることで(自身の住む別府、ひいては温泉街の文化のひとつなので話題に出そうと決めていたのだろう)、このイベントのテーマである驚異の部屋(ヴンダーカマー)的な話に強引に引き戻し、またあらためて巖谷氏にバトンを渡す、などの展開などが挙げられるかと思う。

とはいえ、いくら戻ったり飛んだりしても巖谷氏がそのすべてに上のほうで挙げたような興味深い話で応えてくれたし、そのせいもあってかいま振り返ってみるとそれぞれの話題がすべて底を通じているように思えるからふしぎである。

他方、対談相手のイベントでの振る舞いに関しては、なるほどこういうインタビューのしかた、あえて流れを無視して話題を振ることで会話に絶妙なグルーヴ感を生み出しさまざまな情報を引き出す方法もあるのだなあと感じた。ぜひ参考にしたい、と直感的に思ったけど、このやり方は相手の出かたや技量に委ねる部分が大きいのでやっぱりあまり使うべきではない、というか巖谷國士さんのようなスーパー喋り手にしか通用しないと思うので、やはり参考にならないかもしれません。ほかには対談相手の投げかけに巖谷氏がいちいち否定から入るのも最高だった。否定というより、お互いが持っているボキャブラリーの擦り合わせ、語彙の捉えかたの違いを明確にしてから答えるって感じだったけど。




ちなみにイベントの中で一番驚いたのは、あれだけ話題になった「シン・ゴジラ」は年間映画興行収入ランキングで「君の名は。」に続く二位に終わったが、シン・ゴジラが多大なリスペクトを捧げている初代ゴジラも公開当時の1954年興行収入ランキングでは2位で、その年の1位は岸惠子と佐田啓二が出てる松竹映画「君の名は」だった、というエピソード。歴史はすぐ韻を踏もうとする。

本屋 B&B

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