よき隣人になりたい

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大雨が降る帰り道、あと20mほどで家に着くというところを歩いていると、自宅の目の前にある交差点にて左手で買い物袋を持ちつつ折りたたみ傘を差し、もう片方の手でステッキをついた高齢の男性が雨に足をすべらせどしゃんと尻もちをついているのが見えた。彼はすぐ立ち上がろうとしたが、中腰になった時点でぷるぷると震えてまた転ぶ。無防備な体勢で天を仰ぐずぶ濡れの老人。普段できるだけ知らない人と関わらないようにしているぼくだけど、さすがにここで彼を看過するのは人間としてどうなのよ、と思って小走りに駆け寄り、大丈夫ですかと声をかけた。差してた傘を投げ捨てて両手で彼を立ち上がらせ「 ご自宅は近いのですか 」と尋ねる。幸い彼の家はそこから50mほどの場所だった。とはいえこのままだとまた転びそうで心配なのでご自宅まで送っていくことに。手を引いて付いていきながら彼に歩調を合わせようといつもより意識的にゆっくり歩いたが、右膝が悪いというその男性の歩みはその何倍も遅かった。

彼の家までの道程で一度角を曲がる際「 もうここで大丈夫。ありがとう 」と言ったので、内心不安ながらも「 そうですか…ではお気をつけて 」と応えて手を放したがその直後にまた転んだのでやっぱり家まで付いて行く。彼の住む一軒家( 角を曲がってすぐの場所にあった )に着くと、玄関までの道はちょっとした、しかし膝の悪い人間にとっては十分に急な坂になっていた。なにこの最後の関門、SASUKEかよ、と思ったが、そこではとくに転倒することもなく無事彼を玄関まで送り届け、わたしも安心して来た道を戻って帰路についた。10分で50m。付いて歩くあいだずっと照れ臭そうにしていた彼の表情がいまだに頭から離れない。

これはすこし遅れた敬老の日、と直感的に思ったけど、家の目の前で二回転んで立てなくなった人がいたらご老人じゃなくても助けるだろうから敬老的行為ではないよな、とも思う。むしろgood neighbors的に捉えてくれていたら嬉しいな。別に捉えられなくてもいいけれど。

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